「弁護士が来るまで黙秘が鉄則」 “取り調べ時の心構え”が話題 不利にならない? 投稿者と元警察官に聞く
また西氏は、「捜査段階で黙秘していたからといって、裁判で責任を問われることはない」と説明。黙秘の方法としては、「別のことを考える」「取調官の質問をひたすら覚える」「覚えた内容は『被疑者ノート』に記録する」ことを推奨している。 「取り調べで100悪いと言ったものが、150とか200で捉えられかねない。捜査は起きた事件のことを調べるわけで、不確かな記憶で話しても真相解明につながらない部分がある。それよりも、きちんと裁判で証拠を見た上で話したほうがいい。一方で、100のうち100を認めていて、起訴猶予になるといった時など、黙秘を解除する場合も当然あり得る。ただ、取調官が信頼できるかどうかは初めての人に判断できないので、そこも含めて弁護士に相談した上で決めようということだ」
■元警察官「黙秘で有利になるチャンスを逃す可能性も」
警視庁・元捜査一課の高野敦氏は、前提として弁護士と捜査機関の役割をあげる。弁護士が行うのは、被疑者の基本的人権の保護や、依頼人の利益最大化、権力の横暴の監視。捜査機関が行うのは、犯罪者の取り締まりや真実の追及、被害者の救済、治安の維持。両者の目的は「社会正義の実現」で一致するが、弁護士は依頼人視点になりがちなこと、捜査機関は冤罪の発生などが懸念事項としてある。 「弁護士に言われて本当の犯人がみな逃げていたら、社会正義は成り立たないし、社会秩序はめちゃくちゃになってしまう。被害者側は自分でやり返せないから、“息子を殺した犯人を殺してやりたい”という思いだとしても、グッと我慢して裁判において処罰する。その思いは実現しなくてはいけないわけだ。そして、日本の治安がこれだけ良いのは、弁護士ではなく捜査機関が守っているから。この2つは相反する立場であり、かつ良い緊張関係をもたらしてこそ、冤罪や人権侵害を防ぐこともできる」
高野氏は「黙秘権は私も全く否定していない。その行使を警察官が止めるようなことがあれば大不祥事だ」と説明する一方で、有利になるチャンスを逃す可能性があると述べる。 「例えば、簡単なケンカや出来心の万引きをした時、“ごめんなさい。治療費・お金を払います”と言えば、警察も逮捕はしない。微罪処分は証拠隠滅の恐れがない、犯情が軽微であるとか、被害者が処分を希望していないといった意思が大事になってくるが、相手が黙秘しているとなれば許さないだろう。そうなれば、警察が逮捕しなければならないというのは起こり得る。任意同行で話を聞いて、逮捕状を執行しないことも当然あるが、そういう時に黙秘されると、証拠隠滅の可能性ということで逮捕せざるを得なくなってしまうのは事実だ」 一方、結論ありきで取り調べを進めていくことは基本的にないものの、警察官を見極める必要もあるとした。 「間違った取り調べをしないよう最大限努力するのが普通の刑事だが、信用できない人もいるかもしれない。弁解を聞いてくれるか、裏付けを真面目にやってくれそうな人だったら話す。一方で、話を全く聞かないタイプだったら黙秘すべきだし、勝手に作られたような調書であればサインする必要はない」