米大統領選のキーワード 「一般投票」「選挙人」「勝者総取り」とは?
12月には「選挙人投票」
大統領選挙人は「12月の第2水曜日の後の最初の月曜日」(今年は12月19日)に州ごとに選挙人集会を開いて大統領候補に投票を行い、選挙人投票で過半数の270をとった候補が大統領となります。ます。なぜ間接選挙なのかについては、そもそもは、大統領という国のリーダーを決める際に、国民の投票の結果だけでなく、選挙人というワンクッションを置くことによって、人々が一時の熱狂で一定方面に暴走することを防ごうという狙いがありました。 ただ、この制度を導入したときとは異なり、現代なら「一般国民の声こそ民主主義」という意見が強く、かなり時代遅れの制度となっています。党内での対立が激しかった時代と違って、近年の大統領選挙では、選挙人は自分がだれに投票するかを事前に誓約しています。11月の選挙の結果と選挙人の投票との差は誓約を破る一部のほんの例外を除けば一致します。つまり、一般投票がポイントです。 ところで、選挙人には誰がなるのか。これは各州によって異なりますが、現職の上院・下院議員や州知事、州の党の幹部などを党ごとに任命するケースがほとんどです。例えばメリーランド州の選挙人は10人ですが、選挙の前に同州の政党支部がそれぞれ10人を選んでおき、例えば民主党候補が勝利した場合、民主党側の10人が選挙人に選ばれ、共和党側の10人は選ばれない形です。 選挙人投票で過半数を取った候補がいない場合には、連邦議会の下院が大統領を選出することになります。過半数を確保できなかった異例の事態は、機能している政党が1つしかなく、党内での戦いで票が割れた1824年に1度あっただけで、現在はありえないと考えられています。ただ、今年の選挙の場合、トランプがもし負けた場合、一般投票での負けを認めず、再集計を要求したり,その他訴訟を起こしたりといった遅延戦術を駆使する中で、「もしかしたら」がありえるかもしれません。 ------------------------------------- ■前嶋和弘(まえしま・かずひろ) 上智大学総合グローバル学部教授。専門はアメリカ現代政治。上智大学外国語学部英語学科卒業後,ジョージタウン大学大学院政治修士課程修了(MA),メリーランド大学大学院政治学博士課程修了(Ph.D.)。主要著作は『アメリカ政治とメディア:政治のインフラから政治の主役になるマスメディア』(単著,北樹出版,2011年)、『オバマ後のアメリカ政治:2012年大統領選挙と分断された政治の行方』(共編著,東信堂,2014年)、『ネット選挙が変える政治と社会:日米韓における新たな「公共圏」の姿』(共編著,慶応義塾大学出版会,2013年)