YAECAの二人が語るモダンで心地いい“じゅうたん”論。山形緞通と共に生み出した〈NEW CRAFTON〉。
シンプルな服と暮らしを提案する〈YAECA〉と、羊毛100%の手織りじゅうたんを作る〈山形緞通〉。日本のモダン建築を愛する両者によって、とびきり心地いいじゅうたんが生まれました。いま再び注目を集めている“じゅうたん”の新しい形に迫ります。 【フォトギャラリーを見る】 ・𠮷田五十八や吉村順三、ペリアンも愛した〈山形緞通〉のじゅうたんとは? 「手作りのじゅうたんは本当に気持ちいい。足が喜ぶ感じがするんです」 ものすごくいいものと出会っちゃった……!という表情で、ファッションブランド〈YAECA〉のデザイナー、服部哲弘さんと井出恭子さんがこう語る。それは〈山形緞通〉の緞通のハナシ。緞通とは羊毛を使った手織りじゅうたんのことで、〈山形緞通〉は、昭和9年に国内初の羊毛じゅうたんを生み出したメーカーだ。靴を脱いで素足で暮らす生活や陰影のある空間といった、日本の美意識に馴染むじゅうたんづくりを模索した。 2人が〈山形緞通〉と出会ったきっかけは、神奈川県の鎌倉山にある〈YAECA〉のギャラリー〈ink gallery〉。1974年に竣工した吉村順三の名作〈鎌倉山の家〉を、2019年に中村好文が改修した木造建築だ。「改修の際に中村さんが敷き込みじゅうたんをいくつか提案してくださって、その中から私たちが選んだのが〈山形緞通〉のものだった……ということを、最近になって知りました。気になって話を聞いたところ、実は吉田五十八、村野藤吾、吉村順三、谷口吉郎、丹下健三、剣持勇という錚々たるモダニズムの建築家たちが、こぞって住宅や公共建築に取り入れていたのが〈山形緞通〉のじゅうたんだったんです」と井出さん。 少し前から、「現代の家に合うシンプルなじゅうたんを作りたい」と考えていた二人は、すぐに山形の工場を訪問。糸づくりから染色、織り、仕上げまで、じゅうたん製作のすべてを自分たちで行っている様子に感激した。 「中でも衝撃を受けたのは、わずかな色差の同系色を染め分ける染色技術や、糸の奥の奥まで均一に染める技術。時間をかけて培われてきた歴史の形をまのあたりにして、絶対にこの職人さんたちとじゅうたんを作りたい、と思いました」と服部さんは言う。