“空気中”にもカビは存在する!?“肺炎”を引き起こすカビも!? 「カビ」の生態について東京農大・小西良子教授が解説
川瀬良子がパーソナリティをつとめ、日本の農業を応援するTOKYO FMのラジオ番組「あぐりずむ」。毎週火曜は、農業はもちろん、時代の先を見捉えるさまざまな研究をおこなっている東京農業大学の農学研究を紹介します。6月18日(火)、6月25日(火)の放送では「カビ」をテーマに、食品科学研究室の小西良子(こにし・よしこ)教授に話を伺いました。
◆小西教授が語る“カビの世界”
小西教授によると“食中毒を起こす菌”はカビとは違うそうで「カビ自体が、食中毒の原因になることはほとんどない」とのこと。 そもそも食中毒を起こす菌は、腸管出血性大腸菌やサルモネラ菌などの“細菌”と呼ばれるもので、大体が“単細胞”である一方で「一般的なカビは“多細胞”で、自分で根や茎を作ったり、胞子を作ったりする植物や動物の仲間。例えば、きのこってカビ(の仲間)なんですよ。また、カマンベールチーズの外側にわざとカビを生やしたり、熟成肉なんかでも(熟成中に)カビが生えてきます。だから、カビで食中毒を起こすことは少ない」と話します。 しかし、カビ自身が“毒”を作った場合は「その毒で食中毒を起こすことがある」とも。では、カビがどんなときに毒を作るのでしょうか?「『二次代謝物』といって、自分が生きるために(毒を)作るわけではなく、“敵が来た”とか“自分の領土を広げたい”というときに作るんです。その場合、菌糸という根っこを張って、そこからじわじわとカビ毒が出るものが多いです」と解説します。 小西教授によると、カビを食べて生きている昆虫も結構多いそうで、「人間もそれを見て“カビって食べられるんだ”と……なので、今は食糧難になって昆虫を食べている国や地域もありますけど、ヨーロッパのほうでは、カビでタンパク質を作って食べるケースもあります」と明かします。 また「『ペニシリン』みたいな抗生物質ってカビの二次代謝物なんです。この場合は周りの菌が邪魔だから、こらしめたいと思って二次代謝物が作られますが、それが効きすぎてしまうと“カビ毒”になってしまいます」とも。 ちなみに、パンに生えるカビ1つをとっても、地域が違えばカビの種類も違う可能性があり、そのカビがカビ毒を出すかどうかは、カビ一つひとつを検査しないと分からないため、「人が意図的にカビを生やして、食品製造に使われたカビは食べられるけれども、予期せずにカビがついてしまった食品は食べるのを避けてほしい」と注意を促します。