藤原季節、学生時代は「自分の居場所がなくて」 演劇に出会って得た“気付き”
映画『あるいは、ユートピア』はホテルに泊まり込みで撮影
俳優の藤原季節が映画『あるいは、ユートピア』で秘密を抱える小説家・牧雄一郎役で座長を務めた。映画『佐々木、イン、マイマイン』と『his』(いずれも2020年)で第42回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞、第13回TAMA映画賞最優秀新進男優賞を受賞するなど、数々の話題作に出演する藤原が、自身の現在、過去、未来を語った。(取材・文=水谷賀奈子) 【写真】「是非スクリーンでお確かめください」 藤原季節がアピールした『あるいは、ユートピア』での衝撃的なシーンカット 本作は、東京国際映画祭Amazon Prime Videoテイクワン賞受賞の取り組みの一環として、Amazon MGM Studiosによって製作された金允洙(キム・ユンス)監督のオリジナル脚本による長編デビュー作。11月16日から渋谷・ユーロスペースにて2週間の限定上映が決定している。大量発生した謎の巨大生物によって、終末に向かう世界と、ホテルから出られなくなった12人の人間たちによる群像劇だ。 約2年ぶりの映画出演で秘密を抱える小説家・牧雄一郎を演じる藤原は、本作の面白さを語った。 「登場人物たちはホテルに閉じ込められたことで、今まで生きてきた過去からも未来からも断絶されている世界で『自分たちが何のために生きるのか』という、人間としてピュアなところに立ち返って生きています。自分の本心をどんどんさらけ出していくんです。過去も未来もない彼らが、極めて前向きに生きているという逆説が面白いなと思いました」 撮影も、ホテルを貸し切って全員で泊まり込み、“閉鎖的な”撮影となった。 「作品の延長みたいで、みんなすごく仲が良かったです。1つの空間に2~3週間泊まって撮影することはあまりないことで、夜になるとスタッフさんと俳優部も混じってみんなでご飯を食べたり、原日出子さんが手作りのご飯を振る舞ってくださったり、みんなで歌を歌ったり、楽しい時間でした」 出演者やスタッフら全員で協力し合って過ごす撮影期間となったが、過去の藤原は“集団行動”への苦手意識が強かったと言う。「小学校も中学校も高校も、自分の居場所がなくて、『自分は本当にこの星の生き物なのかな。どこに行けば安心できる居場所が見つかるんだろう』と思っていました」。 そんな藤原は高校を卒業後、大学進学を機に上京し、演劇研究会に所属した。 「幼い頃から映画が好きで、最初は芸能事務所に入ろうと思い、直接事務所を訪ねたりもしたのですが、全然相手にされませんでしたね」 そこから大学の演劇研究会に入って演技に没頭していくことで、“自分の居場所”を見つけることができたと語る。「カメラが回っている時は自分の役割があって、シーンを撮るために自分が必要とされている。自分の居場所が必然的に担保されていると安心感を得ることができました。演劇に出会った時に、自分の居場所に気付きました」。 今や日本のエンターテインメント業界は国内にとどまらず、海外への発信を意識しているものが多い。しかし、藤原は日本と海外を特別に分けて考えることはしていない。 「今にもこの世界を辞めようと思っていた自分のような人間が、映画の舞台挨拶に立たせていただいたり、取材を受けさせてもらったりすることがたった数か月で起きうるのがこの世界なので、自分が半年後に例えばロサンゼルスにいてもおかしくないとは思っています。海外に進出するのか、したいのかは『なるようになる』という思いでしかないです」