<フィギュア>14歳・樋口に真央超えさせた“超高速スケーティング”
スタンディングオベーションが14歳の少女に向けられた。 樋口新葉。開智日本橋学園中学の3年生が、シニアに挑んだ全日本で2位に入った。 去年も、中学2年で表彰台(3位)に上がったが、1年経過して、順位をひとつ上げた。 「今シーズンで、こんなにいい演技できたの初めてで、それが全日本でできたのが良かったです。順位は気にしてなかったのですが、自信がつきました」 冒頭、高さのある3回転ルッツ-3回転トウループを決めた。続けて3回転サルコウ。基礎点が1.1倍となる演技後半に5つのジャンプを組み込んだ攻めのプログラムが樋口の特徴だ。 3回転ルッツからの連続ジャンプでは、2つめの3回転ループで少しバランスを崩したが、立て直して、2回転アクセル、3回転ループにつなげた。 クライマックスとなる3回転フリップから2回転トウループ、2回転ループの3連続ジャンプも圧巻だった。最後の2回転アクセルもスピードに乗ったまま決めると、左手でフリーの選曲「マスク・オブ・ゾロ」の主人公が、剣を前に突き出すイメージでフィニッシュ。まだ中学3年の少女らしく、思わず両手でガッツポーズが飛び出した。得点は127.87点。3位につけていたSPの得点67.48点との合計195.35点で、2位の位置につけた。 樋口の強みは、パワーと「ジェット噴射」とも言われる超高速のスケーティング・スピードだ。 全日本4位でフィギュアに関する著書もあり現在インストラクターとして活動中の今川知子さんは、「スピードはシニアも合わせても現時点で世界でもトップクラスじゃないでしょうか」と言う。
「スピードを出せる理由は、脚力と、エッジに力を使えることのできるセンスでしょう。ひと押しが強いんです。スピードを落とさずに、持ち前の脚力を生かしてジャンプに入るので、非常に高いジャンプが可能になっています。本来、スピードが増すと、ジャンプに入るタイミングや体のコントロールが難しくなるのですが、彼女は14歳にしてそれができているのが凄いところです。 しかも、フリーでも最後までそのスピードが落ちない。スピンにもスピードがあります。そのパワーとスピードが伊藤みどりさんと似ていると言われていますが、伊藤みどりさんは、高難度のジャンプの踏切りに入る前に少しスピードをコントロールしていた印象がありました。樋口さんはスピードを抑えることなくジャンプに入っていますから驚きです。今後、世界でも飛びぬけた存在になる可能性は大です」 ただパワーと超高速スピードを生み出す14歳の肉体は、ガラスの脆さと背中合わせだ。肉体の成長と練習強度のバランスが難しく、今夏は腰を痛め、コンディションを崩した。故障により練習量が落ちると体重コントロールもむずかしくなる。練習不足のまま、ジュニアGPシリーズのオーストリア大会から出場したが、5位と低迷。クロアチア大会では2位に入ったが、ジュニアのGPファイナル出場は逃した。