シグネチャーは昆布の味を堪能する一皿!? 名店出身料理長が挑むのは“瞬間を楽しむ料理”!!!
湯気が立っている間は新米の香りとやわらかさを感じ、湯気がおさまると粒が立ちコシが出て、噛み応えと粘りも強くなります。わずか数十秒ごとにこれだけ表情が変わるとは!
その炊き立てご飯が主役の「御食事」は熊の時雨煮と香の物をお供に、最高の昆布出汁の味噌汁で喉を潤します。
この時雨煮も作りたて。ご飯のお供がおいしすぎてついついお代わりをしてしまいますが、佐々さんは「本日は良い猪が入ったのでコシヒカリで猪丼、その後には鯛雑炊」と食いしん坊にはたまらなくうれしいサプライズを用意しています。「良い炊き方をすると最初は米に3本線が入って割れているのですが、冷めると米がぐ~っと締まって表面がツルッとします。食べてもらった『煮えばな』は6分の蒸らし時間、おにぎりにするならパッと炊いて蒸らし時間を延ばす、仕上がりは沸騰時間と蒸らし時間が大切だと考えます。これは寿司屋で学んだことです。寿司はシャリとタネを究めた料理。寿司と同じように日本料理で米も魚も野菜もすべてを究めたい」と意気込みを語ります。
「水菓子」はできたてのアイスとフルーツ。「塩、砂糖などの調味料も天然にこだわっています。これは種子島産の賞味糖をキャラメリゼして、アルコールを飛ばしたラムとでアイスクリームにしています」と甘みも苦みもほどよいのは天然食材由来だから。できたてはなめらかで口溶けが良いので「今すぐ食べて!」と佐々さん。
こちらをオープンするにあたり、せっかく上海で成功したのだから上海で提供していた料理を中心にしたら?とアドバイスしてくれた人もいたけれど、海外で経験したからこそ、もう一度、日本の食材で自身の日本料理を表現したいと思い、地元が兵庫県西宮という利を生かし、瀬戸内の魚をメインにしたコース料理に。魚屋の3代目である同級生は獲った魚を1日活け越しし翌朝に締めて空輸。昼には鮮度抜群の魚が店に到着します。
佐々さんの料理はまさにフランス料理で言う、作り置きせずに出来立ての瞬間の味と香りを引き出す「ア・ラ・ミニッツ」。魚を捌くのも調味料を作るのも下味をつけるのも、メニューすら当日届いた食材を見て決めるのです。だからよく「今すぐ食べてください!」の声が飛びますが、佐々さんの“瞬間を楽しむ料理”は経験したことのない感動的な食体験を与えてくれます。
日本料理 佐々
住所: 東京都渋谷区広尾5-13-6 ARISTO 広尾ビル 1F
文:高橋綾子 撮影:木村雅章