「森友学園」問題で残る4つの謎 坂東太郎のよく分かる時事用語
(4)金額の違う3つの工事契約書
刑事事件に発展する可能性が一番高い疑惑です。「窮鼠猫を噛む」のことわざ通り政権を揺さぶった籠池証言の中で、言いよどんだのがこの一件。「刑事訴追を受ける可能性がありますので控えます」とかわしました。3月29日には大阪地検特捜部が籠池氏に対する告発状を受理。捜査が始まる見通しです。 証人喚問の具体的なやり方を定める議院証言法は、証人の証言や記録提出の拒否、そしてウソを許していません。ただ刑事訴追を受けるおそれがある場合は、証言や書類の提出を拒めます。籠池氏が「控えます」としたのは、それだけこの点を「ヤバい」と感じているからでしょう。 森友学園は小学校建設費として金額の異なる3つの契約書を提出し、国から補助金を受けていました。 まず国土交通省に対しては約23億8000万円で提出。設計会社が「この金額で正しい」としています。国交省はサスティナブル建築物等先導的事業(木造先導型)を行っており、学園の新校舎が採択され、建築補助金が交付されました。(交付済み約5600万円は全額返金されたと3月29日に発表)。 一方、関西国際空港や大阪(伊丹)空港の運営する関西エアポートに対しては空調の整備など騒音対策への助成金を申請し、金額は約15億5000万円としました。この契約は小学校の施工業者と学園が約15億円で契約。この施工業者は「この金額で正しい」と説明しています。学園は1億5000万円の助成金を求めていましたが、小学校の設立断念後、申請は取り下げています。 大阪府私学審議会に提出した契約書の金額は約7億5000万円。審議会は設置認可を決める組織なので、学園側は少しでも小さな金額を示して財務状況をよく見せかけて認可へこぎ着けようとした疑いが持たれています。
----------------------------------------- ■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。【早稲田塾公式サイト】