「森友学園」問題で残る4つの謎 坂東太郎のよく分かる時事用語
(2)安倍首相、昭恵夫人との関わり
時系列的な順番からいうと「8億円ディスカウント」は「謎第3弾」です。第2弾が籠池証言でにわかに浮上した安倍昭恵首相夫人の“関わり”です。 問題の土地が国と森友学園で10年間の定期借地契約が結ばれたのが2015年5月。籠池証言によると、期限延長など条件の変更を依頼する電話を自身が昭恵夫人にかけたところ、留守番電話だったのでメッセージを残しました。同年11月「内閣総理大臣夫人付」の女性(経済産業省から出向した女性職員)から籠池氏にファクスが送られてきました。そこには「財務省本省に問い合わせ、国有財産審理室(正確には理財局国有財産業務課国有財産審理室)長から回答を得ました」「本件は昭恵夫人にもすでに報告させていただいております」と明記されています。 安倍首相は翌日の国会で、籠池氏側から「夫人付職員」に手紙が来て、答えた」と説明しています。政権側も「夫人付が個人で作成した」と職員のみの判断であったと答えました。 本当であれば、公務員の世界ではなかなかに珍しい現象です。「夫人付」は昭恵氏の常駐職員です。いわば「上司」である夫人から全く意図すら示されないような行動を勝手にするでしょうか。しかも留守電からファクス回答の間に、昭恵夫人は森友学園が国有地に建設中の新設小学校の名誉校長へ就任しているのです。 籠池証言は他にも昭恵夫人との関わりに言及しています。夫人が森友学園で講演した際に、夫人から「安倍晋三からです」と100万円が入った封筒を渡されたこと。そして夫人に講演料として10万円の入った封筒を菓子袋に入れて渡したこと。夫人が人払いをしたため、受け渡しは籠池氏と夫人の2人きりの空間でなされたと証言しています。 100万円は寄付で、安倍首相の選挙区外の人物が相手なので何ら違法性はありません。10万円の講演料も妥当な額でしょう。この辺が過去の疑獄と大いに異なります。 政治家の贈収賄事件に発展したこれまでの事件は、業者側がカネを渡し政治家が便宜を図るという形でした。今回は政治家側が寄付している(籠池証言が事実ならば)ので、正反対です。にも関わらず官邸側が全面否定しているのは、安倍首相が2月の国会で森友学園の土地売買などに「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」とした発言との整合性が取れなくなるからです。 もちろん籠池証言がウソという可能性があるので、首相が事実をねじ曲げているとは言えません。ただハッキリさせたければ、昭恵夫人の話も国会など公式の場で聞かないとバランスが取れないはずです。