「肺がん治療」に新たな可能性 カプマチニブが生存期間の延長効果示すとドイツ研究グループ
非小細胞肺がんとは?
編集部: 今回紹介した研究で取り上げられた非小細胞肺がんについて教えてください。 山形先生: 肺がんは、小細胞肺がんと非小細胞肺がんに分けられます。非小細胞肺がんは、肺がん全体の8~9割を占め、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなどに分類されます。このうち一番多いのが腺がんで、肺がん全体の5~6割を占めます。 次いで多いのは扁平上皮がんで、喫煙者に多く認められるがんで、肺がん全体の3割程度を占めます。大細胞がんは、腺がんや扁平上皮がんのような形状を成さない大きな細胞からなります。 末端近くに病巣ができて、進行が速く、転移しやすく、再発率も高いタイプです。いずれも初期段階では症状がないことが多いですが、進行すると咳、血痰、胸痛、息切れなどが現れる場合があります。
研究内容への受け止めは?
編集部: ドイツのケルン大学病院らの研究グループが発表した内容について、受け止めを教えてください。 山形先生: 本研究では、カプマチニブがMETex14変異を持つ非小細胞肺がん患者に対して、治療歴に関わらず高い奏効率を示し、長期的な生存期間の延長効果も期待できることが示されました。また、カプマチニブは脳転移に対しても有効である可能性が示唆されました。 脳転移は、非小細胞肺がんの予後を悪化させる要因の一つですが、カプマチニブは脳転移の縮小効果も期待できる可能性があります。 この研究では、リキッドバイオプシーがMETex14変異の検出において高い精度を示すことが確認されました。 リキッドバイオプシーは、血液サンプルを用いてがんの遺伝子変異を検出する検査方法で、従来の組織生検に比べて患者さんの負担が少ないというメリットがあります。 したがってリキッドバイオプシーがMETex14変異を持つ非小細胞肺がん患者の診断に有用なツールとなり得ることを示唆しています。 さらに、バイオマーカー解析の結果、MET遺伝子の発現量が高い患者さんほど、カプマチニブの効果が高い傾向が示されました。したがって、MET遺伝子の発現量を測定することで、カプマチニブの効果を予測できるかもしれません。 ただし、この研究は第2相試験であるため、より大規模な第3相試験での検証が必要です。また、カプマチニブの長期的な効果や安全性については、今後も注意深く観察していく必要があります。