パリ五輪前日でも貪欲だった技術向上への姿勢【松山英樹 新春特番単独インタビュー(1)】
「絶対寄せなければいけない時は、そういうものも使わなければいけない」
佐藤 2024年を振り返ると、2勝含めてトップテンが7回。この7回というのは2019年以来の数字なんだそうですけども、特に今年は良かったなという点はあるんですか。 松山 特に良かったものはあまりないんですけど、やはりパッティングが入った2試合で優勝しているので、パットが良ければ勝つんだなっていうのは改めてわかりました。まあ、みんな「それは知ってるよ」と思っていると思いますが。 佐藤 アメリカの報道も、ショットはいつも安定しているからパットがそこそこであれば優勝争いするし、パットがいいと優勝するという、いつもそういう言い方しますよね。 杉澤 そしてオリンピックですよ、ブロンズメダル。おめでとうございます! 松山 ありがとうございます(笑)。 佐藤 いや良かったですね。僕はあの会場から50キロ離れたところで喋っていたんですけども(パリ五輪ゴルフ中継解説を担当)本当に感動しました。フランス開催ということで普段と勝手が違ったのではないかと思いますが、どんな印象でしたか。 松山 初日始まって、練習場に人がこんなにいるんだ、すごいなと思って。パッティンググリーンから1番ティーに向かう時に「うわっメジャーと変わらないじゃん!」と思いながら、ゴルフ熱ってこんなにすごいんだなと思って、びっくりしましたけど。 佐藤 あの時は杉ちゃんも中島啓太選手のキャディでいましたけど、練習ラウンドですごく印象残ったのは、9番パー5のグリーン周りで練習してる時に、丸山茂樹ヘッドコーチが実際打ったりして「どうやって打ってんですか?」って聞いたりしている場面があったじゃないですか。あれが松山選手っぽいというか、普通選手って試合前日はあまり誰かに技術的アドバイスを求めたりしないんですけど、松山選手は貪欲に何でも仕入れて振るい落とす作業をしているイメージで、あそこもまさにそんな気がしたんですけど。 松山 そうですね。まあ真似はできないんで、どうやって打っているかを自分で見て感じることはあります。コーチとも実際どう見えるとかいう話をして、実際にやってみて「あ、これって使えそうかな、どうかな」みたいな。実際試合でやってみないとわからない部分もあるので。 佐藤 いきなり試合でやるってこともよくあるんですか。 松山 ああ、ありますね。それは土壇場でやる時もありますし、そうじゃないと寄らない場面があるので。自分の今持ってる技術では絶対寄らないことがあるので、絶対寄せなきゃいけない時は、そういうものを使わなければいけないし。まあその時にそれを使う勇気があるかないか、ミスしてもいいのかどうか、ということも考えてやりますけど。 佐藤 あの週のあれっていうのはどこかで生きたんですか 松山 最終日終盤の…、14番で使いましたね。勇気はなかったんで思い切ってはできなかったんですけど。 杉澤 東京オリンピックで悔しい思いをして、パリで獲ったというところはどうなんですか。 松山 よくリベンジみたいな感じで言われるんですけど、そういう意識は全くなくて。本当にこのパリで獲りたいという思いが強くて、それは現地に行ってからすごく思って。 杉澤 ああ、現地に行ってから。 松山 はい。それまではメジャーもありますし、何も考えてなくて。メジャーが終わって現地に入ってから「このコースでメダルを穫れたらかっこいいな」と。 杉澤 最終日18番を終えて上がってきたとき、実はアテストのところで待ってたんですよ、中島啓太選手と。 松山 18番最後のパットが入っていればほぼメダル確定でめちゃくちゃ安心していたと思うんですが、銅メダルのプレーオフもあるという状況だったので「これ、気抜いちゃいけないな」と思って。自分の中に不安があったので、それを取り除く作業が必要だなと、直接バッティンググリーンへ向かったんです。 杉澤 殺気立ってたっていうか、もう全然近づけなかったですね。丸山さんだけはスッと行ってましたけど(笑)。でも集中力を切らさずにずっと練習している姿は、本当に武士のような格好良さでした。あれは啓太選手にとってもすごくいい勉強というか、経験になったんじゃないかなと思います。 松山 ありがとうございます。