世界最高峰のサッカーリーグはどのようにして生まれたのか 相次ぐ事故や火災で死傷者、暴動と悲劇を経て動き出した改革【プレミアリーグ 巨大ビジネスの誕生①】
▽大衆紙「ザ・サン」の捏造 事故は暴徒化したリバプールファンが原因というデマが流され、被害者や遺族はいわれのない中傷に苦しんだ。拡散したのがゴシップ記事で知られる大衆紙「ザ・サン」だった。責任を逃れようと警察が捏造した情報を基に「これが真実」と題し、リバプールファンが亡くなった人から物を盗んだり、「勇敢な」警察官に小便をかけたりしたという目を疑う内容を書いた。 遺族は名誉回復のための活動を展開し、イギリス政府は独立した調査委員会を設置。証拠を分析し直した結果、警察がファンに責任を押しつけるため多数の目撃者の証言を改ざんし、ファンに罪はなかったと結論付けた報告書を2012年に公表した。キャメロン首相は「心から謝罪する」と警察の非を認め、サンも「これが本当の真実」とする記事を出して誤りを全面的に認めて謝罪した。 ▽悲劇を機に老朽スタジアムを近代化、リーグ刷新を求める声 サッチャー首相は、控訴院のピーター・テーラー判事に事故調査を命じた。テーラー氏は事故の原因を解き明かした中間報告書に加え、スタジアムの安全対策を盛り込んだ最終報告書を出した。報告書は「テーラー・リポート」と呼ばれ、クラブはこれを基にスタジアムの近代化を進めた。
リポートはクラブに立ち見席の撤廃を促し、一人一人の観客に座席が設けられるようになった。フーリガンが乱入することを防ぐために観客席とピッチの間に設けられていたフェンスも姿を消していった。 古びたスタジアムは最先端の施設に生まれ変わると同時にフーリガンに退場を求め、観客層の変化につながった。刷新を求める声はリーグの統治機構そのものに向かい、プレミアリーグ誕生に向けて歯車が動き出した。