入院中の子どもたちに穏やかな日常を【医療チームの一員! ホスピタル・ファシリティドッグ】
◇入院生活にプラスをもたらす犬の役割
子どもたちにとって入院環境は非日常です。家族や親しい人たちと離れ、知らない人たちに囲まれながら、つらい検査や治療に向き合い、痛みや副作用のほか、さまざまな制約がある生活を送ります。この生活が医療を受ける場だけでなく、成長・発達する場であることも忘れずに、より良い環境にしていく必要があります。 ハンドラーの私とファシリティドッグのマサが、導入4病院目となった国立成育医療研究センターで活動を開始した21年7月。静岡県立こども病院で日本初のファシリティドッグ、ベイリーの活動開始から11年が経っていました。 私がマサと初めて病棟を訪れた際、長期にわたる療養生活を送っていた、ゆきとくん(仮名、3歳)がマサを見るなり、「わんわん!」と立ち上がり、笑顔を見せました。その瞬間、ナースステーションにいた医師と看護師が一斉に、「立ったー!!」と歓喜の声を上げたのです。 治療による影響で、看護師や保育士が積極的に関わっても、なかなか立てずにいましたが、その日をきっかけに歩くように。ちょうど体調が回復する時期だったことも背景にありますが、マサとの出会いがタイミングを逃さず発達を促すことに寄与できたのではないかと思います。病院の中に犬がいることで、普通の入院生活では得ることが難しい外部刺激や経験を提供し、発達を促せることを実感し、このプログラムに関われることの喜びをかみしめたのでした。
◇ファシリティドッグとハンドラーの一日
出勤前、30分以上の朝の散歩から始まります。私たちと同じく、犬たちにとっても運動はとても大事です。散歩中は歩き方や活気などを細かく観察して心身の体調を把握します。さらにグルーミング(身繕い)で身だしなみを整え、出勤します。 当団体のファシリティドッグ・チームは平日5日間、常勤します。また、看護師がハンドラーを務めるため、介入中の患者さんの状況を的確に把握できるのも特徴です。カルテの確認や他職種との連携がスムーズに行えます。患者さんの要望に応じて、検査や治療、処置前後の不安や緊張を和らげるための適した方法を考え、継続的な介入を行います。週当たりの訪問回数や介入時間についても、子どもたちの様子や治療状況から調整します。 その他にも、ファシリティドッグとの関わりを通して子どもたちへ遊びや学習の場を提供します。医師や看護師だけでなく、理学療法士、チャイルド・ライフ・スペシャリスト*、保育士ら専門職と連携します。 人と関わることが好きなファシリティドッグですが、自身の役割を楽しんで果たせるよう、活動に関しては国際基準のガイドラインに則り、ルール化しています。1時間の活動後は1時間以上の休憩をとること、1日の活動は3時間程度が目安です。退勤後の散歩も欠かしません。