「ポケモン×工芸展」が熱海・MOA美術館で開幕、伝統の技法とポケモン世界が掛け合わされた工芸品約80点
静岡県熱海市のMOA美術館で、展覧会「ポケモン×工芸展 ―美とわざの大発見―」が2024年9月9日(月)まで開催中だ。2023年に国立工芸館(石川県金沢市)で初開催され、2024年から巡回展がスタートした同展。MOA美術館で初公開となる新作を加え、ポケモンそのもののデザイン、その技や物語をモチーフに、工芸の奥深い技法や素材で作品に昇華した約80点を展観する。そんな同展の見どころを紹介する。 【画像】ピカチュウ、フシギバナ、ギャラドスが工芸品になって登場! ■一見意外な「ポケモン」と「工芸」の掛け合わせで魅力を発見 「ポケモン×工芸展 ―美とわざの大発見―」は、人間国宝から若手アーティストまで20名の工芸家が、ポケモンをテーマに陶芸、漆芸、木工、金工、染織など多種多様な形で工芸作品に挑戦した展覧会だ。 一見意外に思える両者の組み合わせながら、開催初日のオープニングセッションで「ポケモンのいくつものタイプと、多彩な工芸素材と技術」「お気に入りのポケモンへの愛着と工芸をコレクションとして愛でる感覚」と国立工芸館の唐澤昌宏館長が挙げたように、さまざまなリンクや共通点を持つがゆえの化学反応が同展の大きなポイントとなっている。 また、同展を開催するにあたっては「ポケモンありきのポケモン展には絶対にならないようにしたい」という思いが貫かれており、単に二つを繋ぐのではなく、作品を通して工芸ならではの表現や、ポケモン世界の新たな一面それぞれを同時に楽しめる。 ■ポケモンの個性と工芸の素材やわざ、両者の奥深さが作品に 展示は「すがた ~迫る!~」「ものがたり ~浸る!~」「くらし ~愛でる!~」の3つのテーマで構成されている。 「すがた ~迫る!~」では、金属、土、木などの素材の特性と、それぞれの工芸家の培った知識・技術を用いてポケモンの姿を表現。金工作家の吉田泰一郎による<イーブイ>とその進化系である<ブースター>、<サンダース>、<シャワーズ>や、今井完眞が陶芸の技法で作り出した<フシギバナ>など、ポケモンのフォルムと素材ごとの質感が掛け合った作品が並ぶ。 また、自在置物作家の満田晴穂<自在ギャラドス>や、大きな葉の陰で羽を休めるアゲハントの様子を切り取った木工作家・福田亨の<雨あがり>といった、動きやたたずまい、ポケモンを取り巻く空間の表現も見逃せない。 ポケモンの世界観に挑戦した「ものがたり ~浸る!~」は、ポケモンと工芸ふたつの物語を感じる作品が並ぶ。金属造形作家の坪島悠貴は、<可変金物ココガラ / アーマーガア>で、進化前と進化後の2つの姿を可動させることで表現できる可変金物を制作した。 テキスタイルデザイナーである須藤玲子による<ピカチュウの森>はピカチュウでかたどられた約900本のレースが構成され、来場者は外観だけでなく森の中に入ってその光景を体感できる。作品ごとに、モチーフの選定や想像力に思いを馳せる内容だ。 「くらし ~愛でる!~」では、元来生活や一部であった実用品としての工芸の側面を強く感じられる作品が揃う。染織家の小宮康義は、ゴーストタイプのポケモンが潜んだ<江戸小紋 着尺「ゲンガー・ゴースト」>をはじめ、型染の一つで遠目からは一見無地に見えるのが特長の江戸小紋の文様にポケモンを取り入れた。 茶漆器に伝説のポケモンであるファイヤーをモチーフに選んだ漆芸家・田口義明の<蒔絵棗「春を呼ぶ」>など、工芸が持つ機能美・装飾美の価値観の調和に浸れる作品が楽しめる。 ■ピカチュウグリーティングやトークイベントも開催 展示のほか、8月11日、8月25日、9月8日にはMOA美術館能楽堂にて伝統柄「工字繋ぎ」の着物をまとったピカチュウと一緒に、持参したカメラで写真撮影ができるピカチュウグリーティングが開催される。参加費は無料(入場料は別途)で、1日3回開催予定(※)、各回50組が対象だ。参加の際は、会場前で配布する整理券が必要となる。 (※)1回目:11時30分~(整理券配布10時30分~)、2回目:13時~(整理券配布12時~)、3回目:14時30分~(整理券配布13時30分~) さらに、8月3日(土)には出品作品のエピソードや、ポケモン世界とどのように向き合ったかなど、同展の魅力に迫るトークイベントも開催。事前申し込み制で、申し込みには「MOA美術館ホームページ」からフォームの登録が必要だ。 ポケモンと工芸、それぞれの魅力が足し算ではなく掛け算で増幅された展覧会。ポケモンや工芸の思いがけない表情や、両者の親しみを感じる作品まで、多種多様な感性を刺激する共演を楽しもう。