MUFGで銀証連携違反、兼業規制撤廃から16年-改めて原点問われる
ダブルハットが必ずしも不適切な情報提供につながるわけではないが、今回の処分で銀行・証券が緊密な連携を進める流れに水がさされれば影響は大きい。今後、ダブルハットを拡大するかどうかについて、三井住友FGの広報担当者は「銀証の適切な連携体制の整備を前提として、顧客利便性の向上につなげる体制を慎重に検討していく」、みずほFGの広報担当者は「顧客の意向に基づき適切に判断する」とした。
MUFGの広報担当者は「今回、指摘を受けた真因分析を踏まえた再発防止策を実行のうえ、多様化する顧客ニーズに真に資するあるべき営業体制の検討を実施していく」とコメントした。
全国銀行協会の福留朗裕会長(三井住友銀行頭取)は13日の記者会見で、ダブルハットの職員について「コンプライアンス上の留意事項をしっかりと認識し業務に当たることが不可欠。内部管理部署によるモニタリングも適切に行われる必要がある。各行はこうした体制整備の高度化を前提に銀証連携を進めていくことが重要」と述べた。
もっとも、関係者によると、今回のMUFGの違反では三菱UFJ銀の三毛兼承代表取締役(当時)にも事案が報告されていた。同取締役が不適切な勧誘行為を認識していた状況について金融庁は「銀証連携ビジネスの推進にあたり、三菱UFJ銀行として法令順守意識が希薄であることに起因するもの。三菱UFJ銀行は法令などの順守体制に不備がある」と断じた。
「規制より罰則の強化を」
銀証FWを巡っては、22年にも三井住友FG傘下の三井住友銀行とSMBC日興証券との間で違反が発覚したばかりだ。専門家からは大手銀行グループの内部管理体制に懸念の声が上がる。
金融審議会の市場制度ワーキング・グループでFW規制の見直し議論に参加していた明治学院大学の佐々木百合教授は「同意なきまま銀証で情報共有をしてしまうことが問題。こうした事象を防げないのであれば、規制を厳しくするか、制裁を厳しくするしかない」とした上で、「銀証FW規制は緩和でもたらされる良い面もある。規制の議論ではなく、違反した際の制裁を厳しくするよう検討すべき」と話している。