MUFGで銀証連携違反、兼業規制撤廃から16年-改めて原点問われる
(ブルームバーグ): 金融庁は24日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下の3社に対し、無断で顧客情報を共有したなどとして金融商品取引法に基づく業務改善命令を出した。銀行と証券会社を隔てる壁が改めて意識される一方で、兼業規制撤廃から16年がたち、根付きつつあるサービスをどう適正に運用できるかが問われている。
金融庁の発表によると、業務改善命令の対象は三菱UFJ銀行と三菱UFJモルガン・スタンレー証券、モルガン・スタンレーMUFG証券の3社。認定された主な違法行為の一つが、顧客の同意を得ないまま銀行と証券間の情報共有を禁じる「ファイアウオール(FW)規制」を巡るものだ。
この規制は銀行などによる優越的地位を利用した商品・サービスの押し付けなど顧客の不利益を防ぐために設けられている。一方、金融庁は2022年6月、法人顧客のうち上場企業に関するFW規制を緩和し、情報共有について1件ごとに承諾を得る形から、逆に情報共有を望まない場合に申し出てもらう形に変わった。
ダブルハット
一方で、銀行と証券の連携が深まるきっかけとなった兼職は08年に解禁された。金融審議会の07年の資料によると、国際競争力の強化や金融グループの総合的なサービス提供を推進する狙いがあった。これを受け、メガバンクグループは上場企業への営業現場で銀行員が証券会社の身分を兼職する「銀証兼職」と呼ばれる仕組みを導入し始めた。1人の営業担当者が銀行と証券2つの帽子をかぶるという意味で「ダブルハット」とも呼ばれている。
三井住友フィナンシャルグループ(FG)、みずほフィナンシャルグループの広報担当者はブルームバーグの取材に、大企業営業を担う部署の一部などで銀証兼職の職員を置いていると説明した。一方、MUFGの広報担当者は、営業現場では兼職者を基本的に置いていないとした。
兼職により、銀証連携によるスムーズな業務遂行を望む顧客にとってはメリットも生まれている。銀行商品であるシンジケートローンと、証券の商品である社債や公募増資を組み合わせた資金調達の提案など、これまでは1つの窓口では不可能だった営業が可能になった。