税務調査の追徴税額、平均351万円…「払えないから払わない」「自己破産すればいいのでは?」の末路【税理士が解説】
税務調査で追徴課税となる事例
所得税や法人税の税務調査で追徴課税となりやすい事例には、以下のようなケースが挙げられます。 ●「申告漏れ」が見つかった場合 本来申告するべき売上などの申告漏れが税務調査で発覚した場合です。申告漏れを指摘されやすい事例としては ・計算ミス、計上間違い ・前年度に計上するべき売上を次年度で計上していた(期ズレ) ・会社の資産を使用して得た個人的な収入を計上しなかった ・シェアリングサービスなどインターネットを利用した収益 などが挙げられます。税務調査は所得税や法人税だけでなく、消費税や相続税、印紙税などにおいても申告漏れを疑われる可能性があるため注意が必要です。 ●「使途不明金」とみなされた場合 接待交際費の水増しや個人的な旅費などの経費計上について、証拠となる資料や説明が不充分な場合に経費と認められず、使途不明金とみなされてしまう場合です。 ・個人的な飲食代を接待費として計上した ・帰省した際の旅費を交通費に計上した ・自身の買い物を会社の備品や消耗品として計上した などは指摘を受けやすいでしょう。 ●そもそも「無申告」だった場合 税務申告自体をしていない無申告の状態も、税務調査で発覚すれば追徴課税の対象となります。「申告していないから調べられることはないだろう」と思っていても、税務署では独自のルートやシステムを使い、無申告者をリストアップすることが可能です。 税務調査で申告漏れや経費の水増し、無申告などが判明した場合、延滞税や過少申告加算税、無申告加算税などが追徴課税として課されることとなります。悪質な所得隠しや虚偽申告とみなされた場合、更に重い重加算税が課せられる場合もあるのです。
追徴課税が払えない場合の対処法
追徴課税の支払いは、原則として法定の期日までに一括払いすることとなっています。しかし、どうしても支払えない場合には、状況に応じて以下のような対処法を取ることも可能です。 ●救済措置を活用する 追徴課税が支払えない場合、事前に申請をすれば以下の猶予制度が活用できます。 ・納税の猶予: 納税期間を延長し、支払いを待ってもらえる制度です。納税の猶予が認められた場合、1年間の分納が可能となり、猶予期間中の延滞税も減免されます。ただし、納税の猶予を受けるためには相当の理由が必要となります。自然災害や病気、盗難、廃業などにより経済的に困窮している場合や、法定の納付期限が修正申告で税金が確定した日より1年以上遅い場合などに「猶予申請書」と「修正申告書」の両方を提出し申請することができます。 ・換価の猶予: 既にある財産の差し押さえや、新たに差し押さえの予定となっている財産について差し押さえを待ってもらえる制度です。換価の猶予が認められた場合、1年間の分納が可能となり、猶予期間中の延滞税も減免されます。換価の猶予を受けるためには、追徴課税以外の税金の滞納がなく、一括で税金を納付することによって事業の継続や生活が困難になると認められる場合に、法定納付期限の6ヵ月以内までに申請書を提出する必要があります。 いずれの猶予制度も原則として担保が必要となっていますが、要件によっては担保がなくても申請できる場合があります。 ●法人の場合は自己破産でも免責にできる 個人が自己破産しても税金が免除されることはありませんが、法人が自己破産した場合、手続きが完了すると会社が消滅するため、法人税などの追徴課税は免責にすることができます。ただし、合同会社や合資会社などで無限責任を負っている場合や、代表者として納税保証書を発行している場合は支払い義務が残るため注意が必要です。 ●専門家に相談する 長期にわたる申告漏れや無申告による脱税では、延滞税に加え無申告加算税や重加算税などがペナルティとして課せられるため、追徴額が多額となってしまうケースも少なくありません。追徴課税が払えずに困る前に適正な申告、納税をすることが大切ですが、現在払えずに困っている場合は、税務調査や追徴課税への対応実績が豊富な税理士へ早めに相談しましょう。