水素で走るSUV「ホンダ CR-V e:FCEV」を公道初試乗!優れたパッケージングに秘めた「元気」の力に驚いた
SUVならではのパッケージ性能が生む様々な優しさ
CR-V e:FCEVの個性としてさらに注目すべきは水素で走る市販SUVである、ということでしょう。クラリティや、トヨタMIRAIのようなセダンタイプとはまたひと味違う可能性を感じさせてくれる、テストドライブとなりました。 CR-V e:FCEVがSUVであることの恩恵は、何と言っても扱いやすい荷室とゆったりとした居住空間にあります。運転席だけでなくすべての席から見える景色は、目線が高く開放感に満ちていました。 北米で市販されているプラグインハイブリッドモデル「CR-Ve:PHEV」をベースに開発されましたが、生来の優れたパッケージングは健在。大容量の高圧水素タンク2本を荷室と後席下に積みながらも、十二分なゆとりが確保されています。 スペース効率の点で言えば、従来のクラリティFUEL CELLに比べて小型化、軽量化が徹底された新世代のFCシステムやパワートレーンの恩恵も大きいことは確か。 ユニークなのは、水素タンクを収めたボックス部の張り出しを利用したラゲージスペースの使い勝手です。フレキシブルボードを使うことで、背もたれを倒した時には凹凸の少ない搭載スペースを作ることができます。重量物が置けるように剛性感の高いボードは持ち運びするにはやや重めですが、逆にそれが「なんでも置けそう」な安心感につながっています。 パッケージという意味では、後席の足元が広いことにも感心しました。同時に、開口部からの乗り降りの時の姿勢が非常に自然なこともまた、SUVならでは。たとえばお年寄りが乗り降りする時もラクそうです。
加速感、ハンドリング、身のこなしまで巧みに調律
GMと共同開発した燃料電池システムを中心に、電気モーター、ギア、制御系を一体化したパワートレーンは絶対性能だけでなく、NV(ノイズ・バイブレーション)性能にこだわって開発されているそうです。 実際、市街地でも都市高速でも確かに不快な音や振動が抑えられていることで、ドライバーはもちろんパッセンジャー全員がSUVらしい、ストレスフリーなドライブを満喫できます。 こと「速さ」という面では必要十二分なパフォーマンスの持ち主です。同時に、省燃費に配慮したECONモード制御での扱いやすさが印象に残りました。電気モーター駆動であることをことさら主張するようなピーキーさは皆無ですが、スムーズなトルク感が全域で感じられます。おかげで、終始、交通のリズムに合わせて安心感の高いドライブを楽しむことができました。 「芯が通った」・・・と言えば、落ち着き感のある身のこなしもまたCR-Ve:FCEVの魅力でしょう。振幅感応型ダンパーの採用に加え、水素タンクやパワートレーン系などを可能な限り低く車両の中心に近いところに配置した低重心レイアウトによって、ほどよい重厚感としなやかな挙動が両立されています。 ちなみに上質感の演出に関しては、シンセティックレザーを使ったステアリングホイールの握り心地の良さも貢献している様子。しっとりと指に吸い付くような触感と本革ライクな風合いもまた、気分を盛り上げてくれる重要なエッセンスなのでした。