全国平均は13%なのに約70%で断トツ!! 愛媛県の自転車ヘルメット着用率、ぶっちぎり1位の謎
■愛媛の自転車文化のルーツは台湾にある 愛媛県庁には、自転車に関する課が独立して設置されています。その自転車新文化推進課の石丸正雄さんにも話を聞きました。 推進課では具体的に何を担当しているのでしょうか? 「しまなみ海道でのサイクリングをはじめ、自転車を通じた交流人口の拡大や地域の活性化などを担当しています。 そもそも愛媛県は自転車に対する認識が他県と比べて少し違うんです。私たちは自転車を買い物や通学通勤のための移動手段としてだけではなく、利用者に『健康・生きがい・友情』をもたらしてくれるものだと考えています。これらすべてをまとめて、『自転車新文化』と位置づけています。 この考えは、現職の中村時広知事が就任した10年に、愛媛と広島を結ぶしまなみ海道の魅力を世界に発信しようとしたことに始まります。その活動の一環として、知事は台湾の世界最大級の自転車メーカーであるジャイアント社の劉 金標会長(当時)と面談しました。 知事が会長にしまなみ海道を活用して地域を活性化したいと相談したとき、会長が『地域活性化を目的にすると失敗する。まず、自転車そのものの魅力を伝えないとうまくいかない』と語り、それに知事が感銘を受けたことをきっかけに愛媛県の自転車新文化事業は始まりました。 つまり、地域の活性化を最初の目的にするのではなく、自転車文化を県民に広めていく中で結果として地域が活性化するようにしていくこと。これが、愛媛県の自転車新文化推進施策の中心にあります。 その施策には自転車の安全利用も当然含まれており、全県的にヘルメット着用を呼びかけるようになっていきました。そして13年にはヘルメット着用を努力義務とする条例を制定、その後高校生の死亡事故を受けてさらにヘルメットの着用は広がっていくことになります」
■成長を続けるサイクリング文化 愛媛では何年もかけてヘルメット着用のための基盤が整えられていたんですね。しまなみ海道は、その後どのように発展しましたか? 「劉会長がしまなみ海道を訪れてサイクリングした際、『まさにサイクリングパラダイスだ』と発言し、それが国際的にも話題になりました。 また、県知事や県議会議員がしまなみ海道をサイクリングするイベントを実施して、県のトップから自転車の楽しさを県民に伝える活動をしました。その後14年には『第1回サイクリングしまなみ』という大規模な大会を開き、多くの県民に参加してもらっています。 この大会のおかげでしまなみ海道はサイクリストの聖地として認知されるようになり、愛媛県は世界にも認められるサイクリングランドになりました。最近ではしまなみ海道を走る人の多くが海外からの観光客になっていて、県の産業として大きな力を持っていると感じます」 台湾との交流が愛媛の自転車文化を大きく成長させたんですね。ほかにはどのようなイベントを? 「愛媛県が旗振り役をして、四国4県をサイクリングで一周するイベントを開催しています。同イベントでは、一定期間内に四国を一周できたら完走賞とメダルが贈られます。現時点では約5000人がエントリーしていて、完走者はすでに2000人を超えているほど盛り上がっていますよ。 このようなイベントのほかにも、愛媛のサイクリングをブランド化するための取り組みを数多く行っています。例えば『愛媛サイクリングの日』を設けて県内で一斉に自転車に関するイベントを開いて、子供向けの自転車スクールなどを行なっています。 また、車道や歩道とは別に自転車が走行するための道を設置するなど、県民が自転車文化を楽しく、かつ安全に享受できる街づくりを目指しています。その一環として県を挙げてヘルメット着用を呼びかけた結果が、今年7月の69.3%という高い着用率に表れたんだと思います」 新人編集サエキが地元愛媛で当たり前だと思っていたヘルメット。他県の人も見習って、日本がヘルメット大国になってほしいです! イラスト/福田嗣朗