フォルクスワーゲンID7 詳細データテスト クラス屈指の広さと快適さ 適度な走り 質感は価格相応
はじめに
自動車メーカーは、高価な大型サルーンに主張を込めるもので、それはこの5m級EVであるフォルクスワーゲンID7も例外ではない。とはいえ、堂々たるものながら支持されずに終わったフェートン以来の大型車は、ドイツ製サルーンとしては技術的な先進性も、明らかな高級感も薄い。単に、フォルクスワーゲンは大型EVを作れるのだと示しただけに思える。最初や2番目ではなく、IDバズも入れれば5番目となるEV専用モデルでそれを主張するということからは、遅れている内燃機関から電動への移行における、フォルクスワーゲンの熱意が伝わってくる。 【写真】写真で見るフォルクスワーゲンID7とライバル (16枚) ゴルフ級ハッチバックのID3、クロスオーバーのID4とスポーティなボディタイプのバリエーションとなるID5は、どれも悪くないクルマだ。しかし、楽に乗れる資質は欠けていた。それこそ、しばしばフォルクスワーゲンをベストな選択肢としていた要素なのだが。さらにこのクラスのEV市場では、アジア勢の躍進も著しい。 そこでID7は、そうしたトーンをリセットし、BMW i5やメルセデス・ベンツEQEなどのシェアを奪うことを目指した。サイズ的にはそのクラスに近いが、価格はi4やテスラ・モデル3と競合する。1990年代後半のフォルクスワーゲン的な華美さがあるというテスターもいたが、はたしてどのようなクルマに仕上がっているのだろうか。
意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆
ID7の長いセダンボディは、これまでのIDモデルより空力効率の基礎に優れる。丸みを帯びたフロントとスッパリ切り落としたカムテール的なリアを見るに、エンジニアたちはその素地を無駄にしなかったようだ。0.23というCd値は、この価格帯ではベストで、公称616kmという航続距離に寄与する。フォルクスワーゲンのEVでは最長だ。 しかし、エアフローはひとつの要素に過ぎない。プラットフォームはIDシリーズが共用するMEBで、ホイールベースはID4より200mmほど長い2971mmに延長。そのリアに搭載するのはAPP550と銘打った、現状のフォルクスワーゲンでもっとも高効率な電動パワートレインだ。 永久磁石同期モーターはローターの耐熱性を向上し、1速ギアボックスもフリクションを低減。フォルクスワーゲンでもっともパワフルかつトルクフルとなっている。テスト車の仕様は286ps/55.6kg-mだが、4WDのGTXは340psに達する。 テストしたプロ仕様のバッテリーは77kWhで、急速充電性能は最大175kW。上位のプロSは86kWhで、充電ピークは200kW、航続距離は640kmを超える。 サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアが専用設計で遮音や衝撃吸収を改善したマルチリンクで、スティールのコイル仕様のみ。オプションにエアスプリングの設定はないが、15段階切り替えが可能な改良版のDCCダンパーは選択できる。ただし、エクステリアパック・プラスに含まれ、可変レシオステアリングとのセット装着だ。 ドイツ・エムデン工場で生産されるID7は、シャシー制御の頭脳と言えるヴィークルダイナミックマネージャーの新たなチューニングの恩恵を受けているはずだ。フォルクスワーゲンによれば、電子制御のスタビリティコントロールとダンピングシステムにより、快適性と敏捷性の両立を最適化するという。 同時に、オプションのプログレッシブ電動機械式ステアリングは、長いホイールベースを相殺し、切り始めのレスポンスを改善するため、再調整されている。