日本版データスペース「ウラノス・エコシステム」が目指す欧米の良いとこ取り
欧米の動きの良さを取り入れたウラノス・エコシステム
これらの欧米の動きに対し、日本型エコシステムとして産官学の協力で構築を進めているのが「Ouranos Ecosystem(ウラノス・エコシステム)」である。経済産業省が主導しつつ、IPAのDADCがアーキテクチャ構築を担った。ウラノス・エコシステムは、米国のプラットフォーマーモデルを参考にしつつ、データの量より連携の価値を重視し「どちらかというと欧州の連邦型をイメージしている。アーキテクチャ設計をIPAで行い、研究開発実証と社会実装までを産官学連携で行う」(齊藤氏)。企業や業界、国境を横断するデータ共有やサービス連携などの仕組みを作ることを目指しており、異業種間でデータ共有を行える「場」を形成する。 齊藤氏は、ウラノス・エコシステムで実現したい姿として、メガプラットフォーマーであるAmazon.comの戦略図を挙げる。「Amazon.comは、使いやすいショッピングサイトを構築しショッピング体験で訪問者を増やしてきた。それでマーケットプレースとしての魅力を高めて出品者を増やし、在庫リスクを出品者に分散しつつ品ぞろえを拡大させ、規模を拡大してきた。そして、規模の経済による低コスト化を実現し、無理なく低価格を実現する。このサイクルを繰り返し行うことで高い競争力を実現している。ウラノス・エコシステムはこのモデルやサイクルを、複数企業が参加する形で実現できるようにすることを目指している」と述べる。 ウラノス・エコシステムは最初のターゲットの1つとして、「自動車・蓄電池トレーサビリティ推進センター」のトレーサビリティサービスとして適用が進んでいる。欧州電池規制などへの対応を想定したものだ。電池サプライチェーンに参画するサプライヤーのカーボンフットプリント情報などを一元的に集めて開示する使い方などを想定している。 ウラノス・エコシステムは、この自動車電池のトレーサビリティー同様、業界をまたいだ情報連携が必要な場面に対し、適用を進めていく方針だ。齊藤氏は「必要となるアーキテクチャの開発はIPAで行っており、サービス/データ連携が行いやすい仕組みや、サイバーセキュリティやトラストにかかわる仕組みづくりなどを進める。またAIの安全性については、新たに設立したAISI(AIセーフティ・インスティテュート)で行っている。さらにデジタル人材の育成なども支援する」と積極的な支援を進めていく方針を示している。 「ウラノス・エコシステムは、国レベルのオープンクローズ戦略を実現するものだ。トラストを担保し、共通データの共有を進める一方で、ノウハウにつながる部分はオープンにせず漏らさない。日本の競争力につながるカイゼンや生産プロセスの強みは守ることができる。日本の強みを守りながらデジタル技術における価値を享受できるようにする。IPAとしてそういう仕組みで日本の産業を支援していきたいと考えている」と齊藤氏は語っている。 ≫「モノづくり最前線レポート」についてのその他の記事はこちら
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