右立ちでも左立ちでもない…エスカレーターの『両側立ち』名古屋から全国に拡散へ 条例施行の効果大きく【企画・NAGOYA発】
名古屋市の調査では数字に如実に表れている。24年6~7月にJR名古屋駅、市営地下鉄4カ所、名鉄栄町駅やショッピングセンターなどで実地調査したところ「立ち止まって利用」は全体の93・3%。条例施行前の22年は78・7%で14・6ポイントも上回った。「歩いたり走ったりして利用」は6・7%。21・3%だった22年と比べて14・6ポイントと急激に減っていることが分かる。 エスカレーター利用について継続的に啓発していることも大きい。通勤・通学客の乗り換えも多い地下鉄久屋大通駅の構内の壁には「走らない」「歩かない」などの注意書きが貼られ、地下鉄伏見駅では「条例違反です。歩かないでください」と人の流れを検知するセンサーと人工知能(AI)を使って警告音と音声で注意を促す実証実験も行われた。市交通局が行う啓発活動と連携して、条例施行翌日から「なごやか立ち止まり隊」のメンバーが活動し、条例順守を呼びかけている。
名古屋市の試みは全国に広がりつつあり、同市スポーツ市民局消費生活課の渡辺弥里課長補佐は「福岡市交通局が今年に入って複数にわたって名古屋を視察された。同市営地下鉄で24年11月にAIセンサーを使った実証実験が実施され、検証に入っていると聞いている」と話した。 名古屋でも特に両側乗りが多く見られるのが距離の長いエスカレーターだ。久屋大通駅の名城線と桜通線のホームを結ぶ区間、名古屋駅の地下鉄からJRの地上階を結ぶ区間などがそうで、お年寄りも気軽に右側に立ち止まる。そこで将来的に注目されるのは建設が進められているリニア中央新幹線だ。名古屋駅も地下約30メートルにホームが設置される予定で、エスカレーターを利用して東海道新幹線に乗り換える場合は3~9分かかるとの試算もある。 水野准教授は「距離が長いエスカレーターは転んだりすると大きな事故になりかねない。リニアが開通した時には両側に立ち止まって利用する習慣が定着してくれれば。東京、名古屋の移動時間も短くなれば、通勤する人も出てくるかもしれない。この“名古屋スタイル”が東京に発信されていけばいいなと思う」と期待を込めた。 エスカレーターは歩かないで並んで乗る―。それを実践することは誇らしいことでもある。名古屋発の新たなムーブメントは全国に波及するか。 ◇ ◇ ◇ ○…名古屋が発祥、由来だったという古今東西の事柄や事象を取り上げ、徹底した取材に基づいて歴史や秘話を深掘りする中日スポーツの異色の連載企画「NAGOYA発」が書籍化されます。発売は2025年4月の予定。 21年10月に始まった連載で第35回となる今回で一区切りとなります。書籍では、紙面やウェブサイトで紹介した数あるテーマの中から厳選し、今まであまり知られていなかった名古屋の魅力と秘密をたっぷりと掘り下げます。 問い合わせは中日新聞出版部=電話052(221)1714へ。
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