センバツ2021 カタリナ、あと一歩 “赤い旋風”らしさ発揮 /愛媛
第93回選抜高校野球大会第5日の24日、第1試合に登場した聖カタリナ学園は、東海大菅生(東京)と対戦し3―4で敗れ、初陣を飾ることができなかった。新型コロナウイルス感染予防で入場制限が設けられ、吹奏楽演奏が禁止された。それでもアルプス席からは、最後まで勝利を諦めず堂々と戦うナインらの姿に惜しみない拍手が送られた。【遠藤龍、隈元悠太、斉藤朋恵】 突き抜けるような晴天の下、チアリーダーを含めた約700人が三塁側アルプススタンドに陣取り、鮮やかなチームカラーで真っ赤に染め上げた。 ピンチは序盤に訪れた。桜井頼之介投手(3年)が二回にソロ、三回にツーランを浴びた。創部時の校長、芳野敬三さん(70)は「まだまだこれから」、部OBの川上拓翔さん(18)は「彼らなら大丈夫。恐れなく前を向いて」と声援を送った。八回にも犠飛で失点し、桜井投手の父寿章さん(51)は「落ち着いて自分らしいプレーを」と祈るようにマウンドを見つめた。 3点差を背負い沈みかけた雰囲気を吹き飛ばしたのは最終九回、その桜井投手の一振り。四球を交えて満塁の好機をつくった。暴投や田代勝也外野手(3年)の犠飛で1点差とし、なお2死満塁の一打逆転の大チャンスで主砲・川口翔大(しょうだい)内野手(3年)に打順が回ってきた。 「翔大いけー」「頼んだぞ4番」。フルカウントで最高潮を迎えたアルプス席も固唾(かたず)をのみその瞬間を見守った。たたきつけた打球は三塁手正面へ。“赤い旋風”の初挑戦が終わった。川口内野手の兄で部OBの雄勢さん(19)は「悔しさを糧に夏の大会に挑戦して」とねぎらった。 宇和島東、済美を率いて「甲子園初出場・初優勝」の偉業を2度達成した上甲正典さん(故人)を師と仰ぐ越智良平監督(40)。「『まだまだだな』と言われそう。夏に戻って来られるよう頑張りますと伝えたい」と言い残し、甲子園を去った。 ◇好敵手と再戦、夢は夏に 石川航大捕手(3年) 「本当に緊張する場所。ただ慣れてきたときこそ一番危ないから、いい意味で緊張感を持って」。開幕日に登場した明徳義塾(高知)の主戦、代木大和投手から事前に助言を受けた。中学時代、同じ硬式チームでバッテリーを組んでいた仲だ。 秋の四国地区大会決勝で同校と対戦、代木投手に4打数無安打と完璧に抑え込まれチームも敗戦。前回のセンバツ交流試合(8月)で一足先に甲子園マウンドを経験した好敵手は一皮むけていた。 四国王者として今回臨んだ明徳が仙台育英(宮城)に0―1で惜敗。大舞台での再戦の夢は初日でついえたが「あいつの分まで勝ち上がる」と誓いマスクをかぶった。だが東海大菅生(東京)の鋭い打球が目の前で2度、スタンドに入りぼうぜんとなった。六回代打を送られ、無念の途中交代となった。 「配球に乱れがあった。自分のせいだ」と唇をかんだ。それでも「夏こそライバルと対戦し、勝利をつかみたい」と顔を上げた。【遠藤龍】 ◇選手と心は一つ ○…松山市の聖カタリナ学園では、他の運動部員や教諭ら44人がマスクを着用しテレビで観戦した=写真。相手打線に押される序盤の展開には、選手らにつられるように生徒たちの顔も緊張。二回、本塁打での先制を許すとため息が漏れたが、九回に次々と出塁して1点差まで迫る場面では、メガホンをたたく歓喜の音が室内に響いた。試合後、ソフトボール部主将、西森万祐(まゆ)さん(17)=3年=は「最後まで諦めずにプレーしていてかっこよかったが、甲子園の壁は厚かった。現地に行ったような感覚で夢中になった」と興奮冷めやらぬ様子だった。 ……………………………………………………………………………………………………… 聖カタリナ学園(愛媛) 000000102=3 01200001×=4 東海大菅生(東京)