相続対策としての「不動産の親族間売買」、その活用法とは?【行政書士が実例解説】
親族間で「不動産割賦売買(分割払い)」を使う場合のポイント
親族間売買で不動産割賦売買を利用する場合、売主と買主が十分話し合って取決めるべきポイントが3つあります。 1つめは「割賦期間の利息」です。親族間で自由に決めてもよいのですが、無利息にしてしまうと「みなし贈与」と見なされる可能性があるため、契約締結時点での住宅ローン金利などを参考にして利息を付けるほうが無難です。 2つめは「割賦期間」です。割賦期間も原則自由ですが、実例では、短い場合で1~3年以内もあれば、5年以内を一区切りとする例もあります。住宅ローンのように20年とすることも可能ですが、割賦期間が長くなるとその間で相続が発生することもあります。この場合、割賦金残高は貸付債権として相続財産となります。 3つめは「所有権移転時期」です。不動産割賦売買では、次の3パターンあります。 (1)割賦契約締結と同時に所有権移転登記をする (2)割賦金全額の支払い完了時に所有権移転登記をする (3)割賦契約において、契約締結時に手付金、その数日後に内金を支払う内容の契約として、内金の支払と同時に所有権移転登記をする 上記3パターンのうち、実務上は(3)が多い傾向があります。ただし、上記(2)以外の方法では、売主としては割賦期間中、常に割賦金支払い滞納を気にかけることになります。親族間でも気になる場合は、以下の方法でリスクヘッジすることもできます。 【方法1】所有権移転登記時点での割賦残高に対して、売主を抵当権者とする抵当権を設定登記する。 【方法2】不動産割賦売買契約書を公正証書とし、内容に債務名義となる強制執行認諾約款を入れておく。 平田 康人 行政書士平田総合法務事務所/不動産法務総研 代表 宅地建物取引士 国土交通大臣認定 公認不動産コンサルティングマスター 「相続・遺言・終活・不動産」に専門特化した行政書士事務所として活動。“行政書士業務”と“宅地建物取引業”を同時展開する二刀流事務所として、共有不動産の競争入札による売却や、仲介手数料が不要となる親族間・個人間不動産売買のサポートにも対応している。著書に『ビジネス図解 不動産取引のしくみがわかる本』『最新版 ビジネス図解 不動産取引のしくみがわかる本』(どちらも同文館出版)がある。
平田 康人
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