相続対策としての「不動産の親族間売買」、その活用法とは?【行政書士が実例解説】
親族間売買のメリット
以上が、親族間売買の活用事例です。 親族間売買をするメリットは4つあります。 第一に、「仲介手数料が不要である」ということ。取引相手が決まっている親族間売買の場合、不動産会社に仲介を依頼せず、直接取引をすることで仲介手数料をカットできますが、直接売買に不安がある場合は、一部サポート(契約書作成、不動産調査のみ)を依頼することになります。 第二は「他人に買われることがない」という安心感。第三者以外の身内が所有することで、将来買戻しをする場合には交渉が容易になります。 第三は「共有名義を避けられる」こと。相続人の1人(長男など)が取得することで、相続で共有となることを回避しつつ、贈与でなく売買なので相続人間の財産的な公平を保てます。 残る第四は、「取引条件を柔軟に決められる」こと。身内間の売買のため、取引条件も柔軟に取り決めることができます。
親族間売買のデメリット・注意点
一方で、親族間売買をする上でのデメリット・注意点は3つあります。 1つめは「みなし贈与と疑われやすい」こと。取引条件を柔軟に決められるからといって時価より低額で売買すると、時価と売買金額との差額分が贈与と見なされ、贈与税が課されます。 2つめは「税制上の特例を適用できない」こと。生計を一にする親族間や内縁関係、特殊な関係の法人との売買では、次の6つの税制上の特例が適用されない場合があります。 (1)居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例 (2)居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例 (3)特定のマイホームを買換えた時の特例 (4)買換えで譲渡損失が生じた場合の損益通算及び繰越控除の特例 (5)オーバーローンで譲渡損失が生じた場合の損益通算及び繰越控除の特例 (6)被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例 3つめは「住宅ローン審査が通りにくい」こと。一般的に、銀行は親族間売買に対して、貸付金の住宅取得以外の用途利用やみなし贈与を懸念して住宅ローン審査が厳しい傾向にあり、親族間売買の住宅ローン自体を取り扱わない銀行もあります。そうなると、金融機関の融資が使える場合は、不動産会社の提携先銀行の住宅ローン(不動産会社に仲介手数料を払う)、金利が高い不動産担保ローン、フラット35(利用条件が限定的)のいずれかになります。 とはいえ、逆に親族間だから使いやすい方法として、売主と買主が合意すれば、不動産割賦売買(分割払い)で売買することも可能です。不動産割賦売買とは、売買代金の全部または一部について、売買物件の引き渡し後1年以上の長期間にわたり2回以上に分割して受領する条件で売買方法です。
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