そろそろ決定、次期FRB議長は誰になるのか? ハト派が優勢との見方あり
ここへ来て次期連邦準備制度(FRB)議長の指名を巡る動きが慌しくなってきました。報道によれば、2018年2月のイエレン議長の任期満了を控え、ホワイトハウスでは複数の候補者と面談の場が設けられた模様です。そうしたなか、トランプ大統領は9月29日に「すでにFRB議長の候補と4回面接をした。2、3週間内に決断を下す」と発言。また10月3日には「ムニューシン財務長官がパウエル氏を支持」との観測報道が市場で材料視されるなど、 金融市場の反応も大きくなってきました。2013年10月9日にオバマ大統領が現イエレン議長を指名した日程からは若干遅れそうですが、近日中に重要なアナウンスがありそうです。(解説:第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一)
ハト派候補の指名が有力か?
現時点では(1) イエレン現FRB議長、(2) ウォーシュ元FRB理事、(3) パウエル現FRB理事、(4) コーン国家経済会議(NEC)委員長が有力候補として伝えられているほか、(5) テ―ラー元財務次官、(6) ハバード・コロンビア大学経営大学院学長、(7) ジョン・アリソン前民間銀行最高経営責任者(CEO)などが候補として伝えられています。ホワイトハウス関係者によると、トランプ大統領とムニューシン財務長官は27日にパウエル氏、28日にウォーシュ氏と面談したほか、過去にコーン氏やイエレン議長とも面談したといいます。いずれの候補も政策金利、金融規制のあり方、支持政党にバラつきがあり、誰がトランプ大統領のお眼鏡にかなうのかを予想するのは難しいですが、トランプ大統領が(就任前とは異なり)低金利政策に肯定的な発言を繰り返していることに鑑みると、ハト派候補の指名が有力な印象です。 金融市場がどの候補を歓迎するのかは判然としません。その上であえて言うならば、現行連邦準備制度(FED)の中枢メンバーである(1) イエレン議長、(3) パウエル理事が議長指名ならば、金融政策の予見可能性が高まるという点においてポジティブと考えられます。これまでと同様、金融市場との対話を重視する路線を踏襲した上で、緩やかに金融緩和の解除を進めるでしょう。株価は高値圏維持、金利は低位安定(ないしは緩やかな上昇)、ドルは横ばい(ないしは緩やかな下落)が想定されます。 反対に(2) ウォーシュ氏、(5) テーラー氏、(6) ハバード氏が指名された場合、政策金利引き上げの可能性が高まることから、金融引き締めに備えた取引が活発化する可能性があります。株価は金融株に恩恵が及ぶ一方で製造業や高配当株への打撃が想定され、全体としてはややネガティブな印象。金利は上昇、為替はドル高が進み易いとみられます。また、金融規制の観点からは(2) ウォーシュ氏、(7) アリソン氏が指名ならば双方とも金融機関出身ということもあって金融規制の緩和が意識されそうです。 他方、人種差別問題が起こるまで最有力候補の一人と伝えられてきた(4) コーン氏が指名された場合、市場の反応を読むのは難しいです。インフラ投資拡大、製造業への梃入れなどトランプ大統領の肝いり政策を側面支援する観点から低金利政策を選好するとみられますが、バーナンキ体制をほぼ完全に踏襲したイエレン議長の就任時とは異なり、やや不確実性が高まるでしょう。金融政策の予見可能性が低下することで市場はやや波乱含みとなる可能性があります。その場合、2017年12月連邦公開市場委員会(FOMC)の追加利上げの予想は変わらずとも、18年以降の利上げシナリオに不透明感が生じるでしょう。ちなみに最新のドットチャートによれば、19年は2回、20年は1回の追加利上げが計画されています。 (第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一) ※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。