休日を変えると1週間が変わる? 元マイクロソフト役員が語る「世界の一流の休み方」とは
月曜が憂鬱にならないようにするにはどうすればいいのか
『サザエさん症候群』という言葉がある。日曜日の夕方、明日から始まる仕事や学校に対して気持ちがふさいでしまう心理を表している言葉だ。海外でも「ブルーマンデー(憂鬱な月曜日)」と言われるように休日明けの月曜日を憂鬱に感じるのは世界共通の悩みのようだ。 【年収が上がる週末の過ごし方?】最高の1週間はここから「世界の休日の過ごし方」 読者諸兄も思い当たるふしがあるだろう。土曜日は昼近くに起き出し、溜まった洗濯物を片付け、日曜日はダラダラとネットを見て、気がつけば夕方で、「明日からまた1週間が始まってしまう」とため息をついてしまう──、ブルーマンデーを克服するには休日をどう過ごせばいいのだろうか。 「世界の一線で活躍する人たちも時にはダラダラするものです。やる気がまったくでないから昼まで寝て過ごそう、というのは誰しもが抱く感情で、自然なことです。 僕も散々してきましたが、やりがちなのが意識せずにダラダラ時間を浪費してしまうこと。 ダラダラするときも意図して過ごすべきなのです。『どうせダラダラするなら公園に行って日向ぼっこをしながら』と環境を変えてみる。『昼まで』と時間を区切る。ダラダラするにしても能動的に主体的にするのと、空疎にダラダラするのでは脳や心の疲れの抜け具合が異なります。 意味もなくダラダラしていると、そんな自分を責める自己否定の時間が増えてしまいがちです。休日でまず避けるべき戦略としては、自己否定する時間をいかに減らすか。自己否定してしまうと、肉体の疲れは休めば回復できますが、精神や脳の疲労が抜けません。同じダラダラするなら意図して主体的にして月曜日を迎えたい」 そう説くのは『世界の一流は「休日」に何をしているのか』(クロスメディア・パブリッシング)著者の越川慎司氏だ。越川氏はマイクロソフト元役員で、’17年にクロスリバーを設立し、800社以上の企業で「週休3日・リモートワーク」などの働き方改革を提言している。 ◆マイクロソフト役員たちのアクティブな休日 一例をあげれば、土曜日は休養に充て、肉体の疲労を取り除く。日曜日は自己啓発として教養を手に入れるための知見を広げる時間を持つ。休養(静)と教養(動)を使い分け、休日を活用する考えだ。 「このメソッド自体は現パナソニックHD創始者の松下幸之助氏が唱えたもので、日本人ほど勤勉ではない米国でなぜ労働生産性が高いのかを研究し、休日の使い方に着目したものです。 シアトルで過ごしていた時、マイクロソフトの役員は休日もハーレーに乗ったり、バーベキューをしたりとアクティブに過ごしていました。日本では休日を休息に充てがちですが、アクティブに行動することで心身のリフレッシュを図り、平日の創造性や集中力へとつなげていたのです。 松下氏は『事業は人なり。教養がなければいい仕事はできない。しかし、普段は忙しく時間が取れない。だから1日は休養、そしてもう1日には教養の時間にせよ』と言葉を残しています。ゆっくりした後は普段付き合いのある社内の人間関係ではなく社外から学ぼう。自分の職場や自分を俯瞰的に見るために、普段触れ合っていないコミュニティーなり社会の人と関わりを持って知性を磨こう、と説いています。 『教養』や『知性』と聞いて身構えるかもしれませんが、休日に楽しく遊んでいると、仕事中では気が付かないビジネスでのヒントを発見することはありませんか。楽しく遊ぶためにはどんな働き方がいいのか、と視点を少しズラして日常を見つめ直してもいいかもしれません」 ◆本屋はディズニーランドよりも楽しい 脳は新たな刺激を受けることで活性化する。休日を有意義に過ごすことで平日の仕事にも良い影響を与えられる。仕事の時間と趣味の時間は『対立構造』ではなく、地続きで、良い休日を過ごすことで良い仕事に繋がるのだ。 「教養といっても難しく考える必要はなく、読書がオススメです。仮に趣味が配信動画を観ることだとします。Netflixで『地面師たち』を観て手に汗を握った。 動画視聴だけでなく、小説家の新庄耕氏の同原作に触れてみるのはいかがか。『地面師たち』はシリーズで3冊出ていて、現在、私はシンガポールと釧路を舞台にした『地面師たち ファイナル・ベッツ』を読んでいます。ストーリーテリングが巧みで、映像よりも没入感が強く、ページを繰る手が止まりません。 さらに参考文献にあるノンフィクション作家の、森功氏の『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』へと広げてみることで興味の幅や深さは広がっていきます」 ネット書店よりも街の本屋に足を運ぶべき。もし大型書店があれば、普段よく覗くコーナーだけでなく、くまなく覗いてみることだ。 「本屋はディズニーランドより楽しいですよ。僕のタイムマネージメントを今年一番変えたのは、観葉植物の育て方の本です。観葉植物を育成する際、水をどのタイミングで適切にあげると短い時間で生育が違ってくるのかを知って、タイムマネージメントに役立てました。 本屋に行って書棚を眺めているだけでいま現在、世の中で何が流行っているのかトレンドを学べる。本屋の散策は大型書店だけでなく、地方出張に行った時も必ず行うようにしています。その土地ならではの風習や伝統を知ることができたり、偶然の出会いもあります。街のテーマパークです」 ◆読書には3つの効用がある 普段、読書の習慣がない人こそ、ふらりと書店に立ち寄ってみればいい。本棚を覗くだけでも刺激を受けよう。子供がいなくとも児童書のコーナーを覗いたり、料理ができなくても料理の本を手にすることで未知なる世界の新たな発見へと繋がる。 「世界で活躍する人の教養の柱には読書が必ず含まれています。私の知る経営者の方々は職場に行けば自分の時間はなくなるので、平日の朝30分早起きをして読書の時間を捻出しています。 読書には3つの効用があります。例えば職場で反りが合わない上司がいることで、その人間関係がストレスになっている場合、休日にそんなことを思い返しても馬鹿らしい。しかし、読書をしていればそのストレスから距離を置けます。それが1つ目。 2つ目は本を読んでいると短い時間でも没頭するので、LINEの既読が気になったりすることから離れられ、デジタルデトックスになる。読書をすることでスマホから物理的にも意識的にも離れる時間が生まれます。休日までスマホ漬けでは脳も気持ちも休まりませんから。 3つ目は、コスパが高い教養であること。10年、20年かけてその人が蓄積したナレッジを1000円や2000円で手にできます。こんなにコスパがよいことはない。読書から得た事で仕事への取り組みが変わります」 次の休日には本屋に出かけ、チェーン店ではない喫茶店で読書にふける。スマホも手放し、人間関係や仕事の悩みにとらわれない時間を設けてみてはいかがか。 越川慎司(こしかわ・しんじ) 株式会社クロスリバー代表取締役。国内外の通信会社に勤務した後、2005年にマイクロソフト米国本社に入社。業務執行役員としてPowerPointやExcel、Microsoft Teamsなどの事業責任者を歴任する。2017年に株式会社クロスリバーを設立。世界各地に分散したメンバーが週休3日・リモートワーク・複業(専業禁止)をしながら800社以上の働き方改革を支援。京都大学など教育機関で講師を務める他、企業や団体のアドバイザーを務める。 『世界の一流は「休日」に何をしているのか』(越川慎司・著/クロスメディア・パブリッシング)
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