【ヤマハMT-09 Y-AMT試乗】クラッチ操作不要&自動変速も可!スポーツ走行への「効き目」は?
ハンドシフトの効用「ライディングに集中できる」はサーキット走行でどうだったか
Y-AMTのマナーをひととおり低速周回路で試した後、MTモードのストリートモードに戻してサーキットにコースイン。Y-AMTの変速で感心したのは、素早く滑らかな変速操作だ。ハンドレバーを操作すると、シフトが抜けた刹那に次の段へ移行する感じが非常に滑らかで速く、これはベテランのライダーが操作するマニュアルシフトや、クイックシフターを介した変速より劣るところはない。 あえて言えば、意外と奥まった位置にある-ボタンでのシフトダウンに、時に戸惑う場面があったことくらいだ。最初はサーキットの高速ストレートからヘアピンへの進入などで、-ボタン位置を探る必要があって焦る場面もあったが、たとえ過剰にシフトダウンをしても、スリッパークラッチが後輪のロックを抑止してくれるし、トラクションコントロールの恩恵でもって、コーナー脱出時の開けすぎゴケも十分抑制してくれる。 そして、FJR1300ASでのような、左足シフトの選択肢をあえて採用しなかったことも、意図はよく理解できた。筆者の場合、通常の走行中は左の足裏は土踏まずの少し前をステップに載せ、シフト時に足を少し前にスライドさせて変速操作を行うが、変速が手だけに集約されていればステップの踏み変えは必要がない。 常に車体をホールドするのにベストな状態で、足をステップ踏面に載せておけばいいわけだ。だがしかし、この機構が完全に身体に馴染むには少し時間が足りなかった。ハンドレバーを押せばキチンを作動して変速はするし、押し足りずにギヤ抜けなんて場面は皆無だ。それなのに、長年親しんだ足で操作する確実感がないことに、一抹の心もとなさを感じるのだった。
Y-AMTの真価は、公道でさらに発揮されるはず
試しにATモードのDモード、D+モードでもサーキットを周回。結論を言えば、想像どおりというか、高速ストレートから2速まで落とすようなヘアピン進入ではATモードに頼るのは心許なかった。その状況にリアルに対応した思い通りのシフトダウンとはならず、少なくとも筆者は迫るコーナーに辛抱できずシフトダウン操作を介入させた。 こうした極端なシチュエーションでない一般のワインディングなら、ATモードのDモードでもD+モードでも流すのにさほど違和感はなく、シフトダウンを機会任せにしてもいいと思う。そのうえで、メリハリをつけた走りを楽しみたいならATモードの途中でシフト操作を積極的に介入させればいいのだろう。 今回のMT-09 Y-AMTの取材はサーキット試乗会だったが、一般ユーザーが圧倒的に使う場面……トロトロ走行の市街地からワインディングなどの場で試してみたかったのが正直なところだ。とはいえ、Y-AMT・MTモードのスピード感、違和感の無さは非常に印象深く、昨今のクラッチレス機構の進化を十分実感させてくれた。 ちなみに、このY-AMT付きMT-09の価格は136万4000円(STDのMTは125万4000円、SP仕様は144万1000円)。STDよりちょうど11万円高となるが、サーキット試乗で得た印象の限りで言えば、クイックシフターを標準装備するSTDでも、違和感なく十分楽しい。 問題は足の変速操作が染み込んでいるせいで、自身の思考の転換が完了していないことだが、これが一般道、長距離ツーリングなどでどう印象が変化していくか? 今一度Y-AMTの真価を試してみたいと感じさせられた。