長野・善光寺で「宇宙金箔御守」が登場、宇宙開発の広がりでベンチャーも関連ビジネスに動き出す
■ 「宇宙金箔御守」以外のビジネスも もちろん、全国各地の神社仏閣で授与されているお守りには、金運や無病息災などそれぞれのご利益があるとされる。1(ワン)によると、今回の「宇宙金箔御守」について善光寺世尊院の住職は「現代の技術と伝統的な信仰を結びつける新しい試み。宇宙の広大さと仏教の深淵さを感じて頂けることでしょう」と捉えているという。 発売されるお守りのデザインは、「勝龍」(かちりゅう)と「願星」(ねがいぼし)の2種類。共にアクリル製で、大きさは縦7cm・横4cm・厚さ3mm。上部にあるアクリル製ボールの中に、宇宙金箔が収められている。 「勝龍」には釈迦堂の花ヶ池に姿を現した縁起物の神龍の絵が描かれ、「願星」には日本の窓から願いを叶える一番星を覗く描写がなされている。 販売価格は共に1個2500円(税込み)で、1(ワン)が運営する専用サイトからも入手可能となる。善光寺世尊院とオンラインサイトとでは、紐の種類が多少異なるという。 1(ワン)代表の前田氏にとって宇宙ビジネスの本格的な参入は、今回が初めて。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の元職員をアドバイザーに迎えるなどして準備を進めた。それでも、宇宙ビジネスにつきものの予期せぬトラブルに襲われた。 ロケットは当初今年4月に打ち上げ予定だったが、搭載機器の不具合が判明し、半年以上も延期された。 「資金繰りに余裕のない会社だと、この1回の延期で行き詰まってしまうだろう。SSCと頻繁に連絡を取り状況確認に努めたが、こうした難しさは宇宙ビジネスならではだと感じた」 今回、ロケットに搭載したボックスには、金箔以外のものも入れ、「Space Express―宇宙宅急便―」事業として宇宙に飛ばした。
■ 打ち上げコスト低下でスモールビジネスも可能に 非営利としては、子どもたちの作文や絵画を写真に撮ったデータが入ったSDカードをボックスに入れた。営利目的としては、食塩にする塩や酒造りの原料となる麹、人気キャラクターのカード類やダイヤモンド・アメジストなどの宝石類を入れた。これらは「宇宙に飛ばした」という“箔付け”による付加価値を足した価格で、将来的に商品化するという。 ほかに、ビジネスパーソン向けに自分の名刺を宇宙に飛ばせる「名刺宇宙旅行」サービスを受け付けている。価格は1人あたり11万円(税込み)だが、複数人から申し込みがあった。その名刺も宇宙に打ち上げ、無事に戻ってきた。 今回のボックス回収の成功を踏まえ、今後も「宇宙宅急便」事業を継続する意向だ。SSCのロケットで2026年4月、第2回のサービス提供を予定している。 これまでは、宇宙ビジネスというとロケットや人工衛星の打ち上げ、宇宙ゴミの回収などのビッグプロジェクトが関心を集めてきた。しかし、技術の進歩や民間も交えた競争によってロケットの打ち上げコストが下がってきたことから、アイデアややり方次第ではスモールビジネスも可能になってきた。 この「宇宙金箔御守」は、そんな宇宙新時代の事例の一つと言えそうだ。
富岡 悠希