猛威を振るうインフルエンザ、新型コロナが要因か、「警報」レベルの基準超え
インフルエンザが猛威を振るっている。昨年末の1週間の患者数は、現在の集計方法になってから最多となり、新規患者数はすべての都道府県で増加した。感染拡大の要因として専門家は、新型コロナウイルス対策でインフルエンザが流行しなかったことによる免疫低下の可能性を指摘。「学校の新学期が始まり、感染がさらに拡大する危険がある」と注意を呼びかけている。 【昨年と比べてみる】インフルエンザ感染報告者数の推移 今月8日午後、大阪市生野区の小児科「くぼたこどもクリニック」では、久保田恵巳(めぐみ)院長(54)が発熱症状のある女児の鼻に綿棒を差し入れ、粘液を採取していた。 「インフルエンザの患者は11月中旬ごろから増え始め、12月はとても多かった」と久保田院長。年明けは比較的落ち着いているが、「学校が始まり注意が必要だ」といい、ワクチン接種のほか手洗いや換気などの対策をしてほしいと話した。 厚生労働省によると、全国約5千の定点医療機関から昨年12月23~29日に報告されたインフルエンザ患者数は、1医療機関当たり64・39人で前週の約1・5倍に増加。都道府県別でみても、大半が流行の「警報」レベルの基準となる30人を超えている。 大阪は67・53人、兵庫は74・4人。最多は大分の104・84人で九州地方で患者数の増加が目立つ。休校や学年・学級閉鎖の措置をとる小中高や幼稚園も多く、12月16~22日には全国で5800校園に上った。 検出されたウイルスのうち96%を占めるのが、平成21年に新型として流行したA型のH1N1。発熱やせきの症状がみられ重症化することもあり、医療の逼迫(ひっぱく)が懸念される。 インフルエンザの流行のピークは2月ごろが多く、今年は前倒ししている格好だ。大阪大大学院医学系研究科の忽那賢志(くつなさとし)教授(感染制御学)によると、年によってはこの時期に感染者が増えることもあるというが、ここまで感染が拡大しているのはなぜか。忽那氏が指摘するのは新型コロナとの関係だ。 個々の感染対策に加え、人流抑制などの措置もとられたコロナの感染拡大期は、インフルエンザの患者数も抑えられてきた。「免疫を持たない人がそこで一気に増えた可能性がある」と忽那氏。「感染対策が緩和され、人の移動や海外からのウイルスの持ち込みも増えたことがインフルエンザ患者急増の要因として考えられる」という。
例年は、A型の流行から少し遅れてB型が増えてくるパターンが多いとも指摘。「B型の感染者も少しずつ増えており、今後感染がさらに拡大する可能性もある」と話している。(藤木祥平)