なぜ「ポルシェデザイン」は時代を超越するのか? 偉大なる911を生み出したカーデザイナーの哲学。
「ポルシェデザイン」の礎は初代911にあり? 1972年の創業から半世紀以上にわたり愛されるづけるブランドの魅力について、元カーデザイナーの渕野健太郎が解説します。 【写真】え、こんなモノまで「ポルシェデザイン」だったの?(全24枚)
ポルシェデザインの創業者であるフェルディナンド・アレクサンダー・ポルシェ(以下 F.A.ポルシェ)は、ポルシェの創業者であるフェルディナンド・ポルシェの孫であり、あの初代ポルシェ911(俗に言うナローポルシェ)をデザインしたカーデザイナーなのです。 ポルシェ911と言えば、最も多くの人が賞賛しているカーデザインではないでしょうか? ナローポルシェから993型まで30年以上、基本デザインを変えなかった事がすごいのですが、エンジンが水冷になった996型以降も、現代的に進化させつつ基本的なシルエットや立体構成は引き継がれています。 F.A.ポルシェは、「良いデザインは誠実でなければならない」と言う哲学があったそうです。物体の機能を分析する事でカタチが明らかになるという、いわば「究極の機能美」を追求していたのですね。バウハウス起点の、いかにもドイツらしい思想で、また今日までのプロダクトデザインにおける基本的な考え方のひとつです。
新旧911のデザイン比較
さて今回、ポルシェデザインの発表会場となった外には、そのF.A.ポルシェがデザインしたナローポルシェの次の世代である、930型ポルシェ911と、最新の992型911カレラTが並んで展示していました。 この2台をじっくり見ていたのですが、基本的なデザイン構成は良く引き継がれているなと感じる一方、思いのほかリア周りのボリューム感が違うんだなとも思いました。930型の方は、リアコンビランプがかなり下にあり、リアの造形が大きくスラントしています。前からの造形の流れを考えると、リアのボリュームが下がっているんですね。 それに比べて最新の992型911は、カーデザインの定石通り、ボディの軸がリアにも表現されているので、リアコンビランプ周りもだいぶ高い位置に移動しています。 一般的にボディの軸はしっかり見えた方がクルマの塊感が出てデザインの魅力が出るものですが、930型を見ていると、そのような理屈だけでも無いんだなと感じさせます。 あの下がったリアデザインは911の大きな特徴で、魅力的です。 ちなみに日本車には、ポルシェデザインが関与したクルマがあります。特に公表されていたのは、スバル・レガシィ・ブリッツェンです。3代目、4代目レガシイの特別仕様車として販売されたこのクルマは、フロント、リアバンパー、ホイール、グリル、リアスポイラーをポルシェデザインがデザイン、監修しました。 スバルとボルシェといえば、水平対向エンジンを作り続けている両雄ですが、その2ブランドのコラボということで、当時話題になりましたね。その他、公表されていないが関与をウワサされた日本車もいくつかありました。