悔しいです…8年前の相続で父親の財産・総額5億9,000万円はほとんど兄が独り占め。〈54歳長女〉と〈80歳母親〉が悔し涙を流したワケ【相続の専門家が解説】
遺留分算定の基礎となる財産は時価評価を行う
このように、不動産の評価方法は複数ありますが、遺留分算定の基礎となる財産額の算出にあたっては、時価による評価をする必要があります。この点、固定資産税評価額や路線価をそのまま使ってしまうと、(特に高額な土地などの場合)不動産の評価額は時価よりも安くなりがちです。 そこで、遺産分割調停や遺留分調停の現場では、当事者間において、固定資産税評価額等を一定割合で割戻した額(例えば固定資産税評価額を7/10で除した額)を時価として合意をすることがあります。 また、同じく調停においては、これらの評価方法を使わずに、不動産業者による不動産の査定を行い、双方が査定書を証拠として提出した上で、双方の査定額の中間額を時価額とする場合もあります。
8年過ぎてからは遺留分の請求はできない
父親の財産額からすると、本来は母親には2分の1の権利があり、2億9,500万円の財産を相続しても相続税がかからない範囲です。裕子さんも1億4,750万円が法定割合の4分の1になりますので、もう少し多く相続できたといえます。 しかし、8年過ぎたいま、遺留分侵害額請求の時効にかかっており、もう請求できないのです。しかも、遺留分侵害額請求は本人が個々に侵害された相手に、文書で請求しなければなりません。母親も裕子さんも請求できることを知らなかったと言いますが、それでも1年以上過ぎた場合は請求できないとなります。 こうしたチャンスを逃さないために、遺留分侵害額請求を知識として知っておくことが必要になります。あらためて知っておきましょう。
想定相続分を侵害されると遺留分の請求ができる
遺留分とは、亡くなった人の兄弟姉妹以外の法定相続人に対し、最低限保障される遺産取得分です。子どもや配偶者は法定割合の半分が遺留分となり、財産を相続する権利を持っており、この権利は遺言書によっても奪うことはできません。 従って、遺言書によって長男に遺産のすべてを贈られたり、愛人に財産を残されたりした場合でも、一定の範囲の相続人は、遺留分を主張すれば必ず一定の財産を取得できます。 遺留分が認められる相続人の範囲は、つぎのようになります。 遺留分が認められる相続人 遺留分が認められるのは、以下の範囲の相続人です。 配偶者 亡くなった人の夫や妻が相続人になる場合、遺留分が認められます。 子ども、孫などの「直系卑属」 子どもや孫、ひ孫などの被相続人の直接の子孫を「直系卑属」と言い、遺留分が認められます。 親、祖父母などの「直系尊属」 親や祖父母、曾祖父母などの被相続人の直接の先祖を「直系尊属」と言い、遺留分が認められます。 遺留分が認められない相続人 被相続人の兄弟姉妹や、兄弟姉妹が先に亡くなっている場合に相続人となる甥姪には遺留分が認められません。遺留分を請求するには、複雑な計算をしたり、ほかの相続人と話し合ったりしなければなりません。相続人同士が対立していたら、なおのこと大変です。
【関連記事】
- 郷里の母への仕送りを、母がすべて私名義の口座に貯金していました。このお金に相続税は課税されますか?【弁護士が回答】
- 【年金月38万円・60代夫婦】余裕の老後生活へシフトのはずが一転。郷里の兄嫁、クルマに90代の母を乗せ、遠路はるばるやってきて…人生最大の番狂わせに「いまは無の境地」
- 「もうムリ、ごめんね」50代独身ひとりっ子、年金15万円・80代の同居母を残し、生まれて初めて実家を離れた切実理由
- 30代長男の死…嫁は「私たちを頼らないでください」と言い残し、孫を連れて海外移住。食堂で働き詰めの高齢母が、涙をこらえて遺した〈まさかの遺言書〉
- 「親が亡くなったら、真っ先にコンビニへ走る」が新常識!相続手続きで困らないためにやるべき、たった一つのこと【税理士が解説】