元ラーメンズ・小林賢太郎が作ってきたもの 「うるう」公開をきっかけに改めて感じた古びない独自性
今年のうるう日を前に自身のYouTubeチャンネル「スタジオコンテナ」に演劇作品『うるう』を公開した元ラーメンズ・小林賢太郎。彼個人やラーメンズからの影響を公言する芸人も多く、実際にそれを感じるスタイルも見られる。具体的に小林はどんなコントを作ってきたのか。改めてその特徴について考える。(ライター・鈴木旭) 【写真】「ラーメンズ」時代の20年前の小林賢太郎さんと片桐仁さんの貴重な姿
片方がまったくしゃべらない
2月20日、元ラーメンズ・小林賢太郎がYouTubeチャンネル「スタジオコンテナ」に自身の演劇作品『うるう』の公演映像を公開した。 うるう日を迎える9日前のタイミングで動画をアップし、その収益を今年起きた能登半島地震の被災地に寄付すると表明したのも彼らしい。2020年に芸能活動からの引退を発表しているが、その存在はいまだ大きいままだ。 現在のお笑い界を見渡せば、男性ブランコやダウ90000・蓮見翔などラーメンズの影響を公言する後続は少なくない。それは、小林ともう一人の元ラーメンズ・片桐仁でしか表現できない特有の世界観があったからだろう。 例えば、片方だけがしゃべり、もう一人は一言も発することのないコント。その一つである「現代片桐概論」は、教授役の小林が「教材用片桐仁」と書かれたランニングシャツと白パンツ、白靴下姿の片桐を背負ってやってきて教壇の横に置き、講義を始める。 その後は、小林が「謎の生物・片桐」について語る独壇場だ。基本的に片桐はペンギンのように手元を外側にそらせたまま微動だにせず、小林が講義の一環でパンツに手を突っ込むと何とも言えない微妙な反応を示す。そのシュールな状況がジワジワと笑いを誘った。 逆に片桐だけがしゃべり続ける「たかしと父さん」というコントもある。学生のたかし(小林)は自室で勉強に没頭している。そこに架空の父親(片桐)がやってきて、延々とたかしにかまってもらおうとはしゃぎ、勝手に話を展開してはボケ続ける。その妙な空気感に小林が笑いを堪えるものだ。 最近では、このパターンがお笑いコンビ・バッチトゥースの漫才で見られた。恥ずかしがり屋なボケが相方に耳打ちしながら展開し、口元を隠した手を避けると「耳を食べている」ことが発覚したりする。もちろんコントと漫才という違いはあるものの、いまだ片方がしゃべらないシステムが有効なのだと気づかされた瞬間だった。