元ラーメンズ・小林賢太郎が作ってきたもの 「うるう」公開をきっかけに改めて感じた古びない独自性
映像を使ったパフォーマンス
最後に触れておきたいのが、映像を使って披露するネタだ。小林は自身のソロ公演で早くからこれを実践している。 2005年に開催された小林のソロ公演『ポツネン』では、人差し指と中指を交互に動かして映像の世界を歩いたり、泳いだり、駆け回ったり、飛んだりする「Handmime」を披露。また、続く2006年の公演『○ -maru-』では、スクリーンに映し出される「●」をベースに展開する「Paddle」が印象深い。 ●は下手から飛んできたり、上から落ちてきたり、増幅したりする。これを小林が次々とラケットで打ち返せばメロディーになり、ラケットをバンっと叩けば●に足が生えて左右の端へと退散したりする。 一定のリズムで鳴り続ける音をベースに、映像と小林の行動がリンクするのが見ていて心地良い。ラストで影の強敵が現れて戦う展開も含め、まるでマジックを見ているかのような緻密なパフォーマンスが圧巻だった。 映像を使用したネタと言えば、2020年の『女芸人No.1決定戦 THE W』決勝で披露されたAマッソの映像漫才を思い浮かべる方が多いのではないだろうか。プロジェクションマッピングを使用し、漫才とリンクさせるこのネタには、放送作家・白武ときお、映像作家・柿沼キヨシが携わっている。こちらも作家性を感じさせる秀逸なパフォーマンスだった。 そのほか、基本的にナレーションによって進行していく「バースデー」(ラーメンズの公演『鯨』のコント)、マイペースで奔放な部長(片桐)と妙に数字に強い副部長(小林)の会話が光る「金部」(ラーメンズの公演『STUDY』のコント)など、その手法や要素は今でも若手のネタのどこかしらに見ることができる。 今後、演者としての活動は見られないにしろ、まだまだ小林には作家や演出家として新たな作品を生み出していってほしい。