申ジエに単独インタビュー。「今のやりがいは若い選手に伝えること。だから、聞かれたら何でも答えちゃいます」
周りからは永久シードのことをよく言われるという申ジエ。もちろん永久シードを達成したい気持ちはあるが、申が何よりも大切にしたいのは、優勝という結果よりも、そこに到達するまでの過程だという。日本の試合はもちろん、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアと今シーズンも世界中で活躍を続ける申ジエにいま思うことを聞いた。
「いま日本で28勝していて、あと2勝で永久シードですね、とよく言われます。でも、30勝は通過点と考えていて、できるだけ長くプレーしたいと思っています。どの試合も優勝を目指していますが、優勝に辿り着くまでの過程のほうがもっと大切だと考えています。過程というのは、これまで積み重ねてきた練習量だったり、戦える体を作るためのトレーニングだったり、体調管理や食事のことまで、勝つために自分が頑張ってきた努力のことで、その努力に結果がついてくればいいと思っているんです」(申ジエ・以下同)
人に教えることで自分もアップデートされる
アメリカで賞金女王になった経験もあり、元・世界ランキングナンバーワンでもある。メジャーも2つ勝っている。そんな申ジエは、難しいコースのサバイバルゲームになったとき、いつの間にか優勝争いに絡んでいるイメージがある。 「よくスロースターターって言われるんですよ。本当は私だって、初日からいいプレーをしたいと思っているんですけどね(笑)。でも、性格なのかもしれません。自分のゴルフも体も常にコントロールしていたいんです。だから、最終日だからといってプレースタイルを変えて、超・攻撃的に攻めまくることはありません。初日から最終日まで、もっと言えば、ひとシーズン、常に安定してプレーすることが私には合っているんです。それと、最後に息切れしないように心がけて、最終日のバックナインにスパートできる余力が残っているのかもしれません」 申ジエは、若手選手に聞かれたことは何でも教えてくれると評判だ。日本流に言えば、敵に塩を送るどころか、敵に知恵と武器を授けているようにも見える。 「私がプロになりたての頃は先輩プロがたくさんいて、先輩がいるだけで安心感がありました。いまはどんどん選手の平均年齢が下がってきていますが、私もそういう若い選手たちのいい先輩でありたいんです。プロゴルファーって、ゴルフだけが大事じゃなくて、社会的な責任も負っていると思うんです。ゴルフの世界の中で、自分ができる役割をやってこそのプロだと考えていています。だから、たとえばアプローチとかパッティングとか、『それ、どうやって打っているんですか?』と聞かれると、隠さずに全部教えます」 「私のアドバイスでその選手の成績が上がったら、それは幸せなことだし、私はそこにやりがいを感じるんです。それと、人に教えることで新しい発見や気づきがあったり、自分のスウィングを客観的に再確認することもできます。若い選手に教えているつもりが、私の知らない感覚や打ち方を若い選手と共有できることもあります。自分だけ強ければいい、っていう考え方は長持ちしないし、油断を生むんですよ。だから私はずっとそうやってツアーを戦ってきたんです」