明豊、継投逃げ切り8強 投打にリズム、好守光る /大分
<センバツ甲子園> ◇あす龍谷大平安(京都)と準々決勝 「初のセンバツ8強だ!」--最後の打者の打球がセンターのグラブに収まると、明豊スタンドは割れんばかりの拍手が湧き起こった。第91回選抜高校野球大会で県勢の明豊は29日、昨秋の明治神宮大会優勝の札幌大谷(北海道)との接戦を制し、これまでの甲子園の最高成績であるベスト8入りを果たした。優勝候補の横浜に続き、「秋の王者」を撃破。歴史を作るため、31日の準々決勝で龍谷大平安(京都)に挑む。【田畠広景、砂押健太】 【熱闘センバツ全31試合の写真特集】 「俺が取ってやる」。四回裏2死二塁の好機で打席に入った4番の野辺優汰選手(3年)は、2年生エース、若杉晟汰投手にこう宣言していた。相手投手は交代したての太田流星投手(同)。待っていた直球を快音を響かせて振り抜くと、打球は右中間深くに突き刺さる適時三塁打。スタンドは大歓声に包まれた。「一番欲しいところでヒットが出た。これで明豊打線に火がついてほしい」。父英一郎さん(42)も自然と応援の声に力が入った。 直前の四回表は大ピンチだった。札幌大谷が内野安打を含めた3連打で1死満塁に。「点を取られてもよい。味方が取り返してくれる」。こう信じた若杉投手は強気の投球を続け、後続を抑えきった。「この頑張りに応え、エースを楽にさせたい」。この思いでもぎ取った先制点だった。 太田投手は右横手という対戦したことがほとんどないタイプだったが、明豊ナインには自信があった。監督に右横手で投げてもらう打撃練習に取り組んでいたからだ。五回裏には、山田昭太選手(2年)の二塁打をきっかけに1点を追加。山田選手の母めぐみさん(48)は「思い切って振ってくれました。うれしい」と目を潤ませた。 しかし、その後は、落ち着きを取り戻した相手投手の前に打線は苦しんだ。すると、今度は投手陣が踏ん張った。六回表に無死一、三塁のピンチを迎えるも、若杉投手が、先輩の大畑蓮投手(3年)の「後ろに俺がいるから安心しろ」という言葉に励まされ、力いっぱい投げ込んで内野ゴロに。これを宮川雄基遊撃手(2年)が華麗にさばいて重殺を取った。1点を失ったものの窮地を脱し、八回からは大畑投手が登板。見事な投手リレーで、相手打線を最少失点に抑えた。 投打の信頼で1点差ゲームを勝ち取った明豊。「次の試合で新しい自分たちの時代をつくる」(大畑投手)。春夏通じて初の甲子園ベスト4が見えてきた。 ◇応援部隊駆け付け、勝利のメロディー ○…一塁側アルプススタンドには、同じ学校法人の別府大吹奏楽団23人が“応援”に駆けつけた。明豊吹奏楽部の部員は5人。しかし、選手たちを後押しする大演奏をしようと、約2週間前から大学生らと合同練習を繰り返してきた。ホルン担当の白石悠真(ゆうしん)部長(3年)も「選手たちに思いが届くよう、前に前にと大きな音を出していきたい」と全力。この日は体調不良などで部員2人が欠席だったが、先輩たちとの相乗効果で勝利につながるメロディーを奏でた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■青春譜 ◇けが乗り越え攻守に貢献 山田昭太中堅手=2年 「届いてくれ!」--。九回2死一塁。風にあおられ、予想よりも大きく手前に落ちていく難しい打球。ヒットになれば同点に追いつかれるかもしれない。必死で走り、腕を伸ばすと、ぎりぎりでグラブに吸い込まれた。「勝ったぞ」。けがを乗り越えて「つかみ取った」勝利だ。 小学校3年から野球を始め、自信があった。だが、高校に入ると、甲子園を目指す先輩らのレベルの高さに驚いた。「走攻守、全てを頑張らないといけない」。特に不安があったのは外野の守備。コーチに付き合ってもらい、居残り練習で打球の追い方や、捕球の方法を学んでいった。 しかし、アクシデントが襲う。昨秋の九州地区大会県予選決勝で、大飛球を追いかけてフェンスに顔から激突した。上下の前歯計4本を折るけが。これでは食いしばることができない--「力が入らずショックを受けた」。そこで自分を救ったのが発想の転換だ。「無駄な力が入らなくなると思えばいい」。そう考えると、気持ちが楽に。恐怖心にプレーを邪魔されないよう、ノックでフェンス際に何度も打ってもらうなど、以前よりも練習への積極性が生まれた。 地区大会後は歯の治療を終え、力強いスイングも戻ってきた。五回裏には先頭打者として二塁打を放ち、その後、2点目となる本塁を踏む活躍。「次の試合も力強いスイング、攻めの守備で貢献したい」。逆境も成長の糧にして上に駆け上がる。【田畠広景】 ……………………………………………………………………………………………………… ▽2回戦 札幌大谷 000001000=1 00011000×=2 明豊