廃業した牛舎で人知れず生きた2匹 野犬の保護活動の在り方を考えたい
理解ある飼い主さんとの出会いを求めたい
「一昔前は、行政に保護される子は純血種が多くいました。安易な飼育に関しての啓発活動が進んだこともあり、そういった子は減りました。その分、現在保護される子は高齢で病気が進行していたり、迷子で収容され飼い主の迎えのないミックス犬や野犬だったり、譲渡まで時間のかかる犬が増えているのです」 となると、「譲渡希望の方とのマッチングが難しいのでは?」と質問をしてみました。 「そうですね。最近の傾向としてはみなさん、保護犬を迎えることに慎重になっていることは感じます。当法人のHPで譲渡犬を見て迎え入れたい、と実際にシェルターにいらしても、元野犬の子たちの姿を見ると『自分たちには無理』と感じる方も少なからずおられます。保護犬を迎える社会的意義を頭では理解していても、根気よく元野犬と接することができるのかどうか、不安に感じるようです。実際私たちも、すべての野犬が人と暮らすことははたして彼らにとって幸せなんだろうか、と考えるときもあります。心ある獣医師のプラン構想に、『野犬リハビリセンター』といった施設を作り、心と体のリハビリを専門的に行い、それでも譲渡が難しい子は、一生涯ストレスなく自由に過ごせる環境を与えることの出来る施設を用意するというものがあり、心から賛同しています」
日本らしい保護スタイルを考えたい
筆者の個人的な話ですが、現在19歳5か月の愛犬を介護しています。ステロイドのためか全身の毛が抜け、体重も半分になってしまいました。獣医さんからは安楽死の提案も受けました。けれど、私にはそれは決して選択できることではありませんでした。今できる精一杯の介護をしていますが、ときにくじけそうになる瞬間も多いです。これほど犬の最期を見送ることが大変だったとは、正直思いませんでした。 超高齢化社会のゆがみは保護犬猫達にも及んでいて、都心に行けば行くほど高齢の飼い主が高齢のペットを致し方ない理由(病気や入院など)で手放すことが続いています。それでも生きとし生けるものを大切にし、与えられた命を全うすることを美徳とする精神のある日本では、犬猫の命も尊いものです。お世話ができないから、と簡単に飼い主の都合で命を絶つことはできない国民性なのです。 犬猫が高齢であればあるほど譲渡先はそう簡単に見つかりません。終生飼養となれば、保護団体の労力や医療費は膨らみます。でき得るなら、立ち行かなくなったときに安心して愛犬を託せる仕組みを整えられないものだろうかと考えます。 例えば、突然の保護依頼にも対応できる余裕のある設備、専門スタッフが24時間常駐している施設、犬猫を深く理解しているボランティアが集うシェルターなど、日本人らしい優しさが詰まった保護施設を増やすこと……。 犬の飼育頭数は減っています。 アニドネとしては、犬の飼育の難しさを理解し、人間側の意識をスイッチするいい機会ではないか、とも捉えています。北国で人知れず育った海ちゃんと海斗くんの姿に日本の保護活動の有り様を考える機会をもらいました。寄付を届けるアニドネとして、これまで以上に踏ん張って、活動していきたいと強く思いました。 最後に、海ちゃんと海斗くんは北海道内で新しい飼い主さんを募集中です。詳細は認定NPO法人HOKKAIDOしっぽの会のHPをご覧ください。