「ポルシェ911」に初のハイブリッドモデルが登場 その特徴を分析する
T-ハイブリッドの重量増は50kg
2015年から2017年にかけて、ルマン24時間レースで3連覇を果たした「919ハイブリッド」が熱エネルギー回生システムを搭載していた。その革新的な技術が量産モデルに降りてきたと思うと感慨深いものがある。 T-ハイブリッドは8段デュアルクラッチトランスミッション(PDK)の後端に最高出力54PSのモーターを搭載する。アイドル回転でも最大150N・mのトルクでエンジンをアシストするというから、電動ターボチャージャーとの合わせワザで、低回転・低速時の力強さは保証されたようなものだ。 T-ハイブリッドのシステム最高出力は541PS、同トルクは610N・mとなる。3リッター版の0-100km/h加速タイムが4.1秒なのに対し3.6リッターのT-ハイブリッド版は3.0秒で、パフォーマンスの違いは歴然。絶対的な加速性能だけでなく、ターボと駆動用の2基のモーターアシストが寄与するレスポンスの良さに感動を覚えそうだ。 円筒形セルを敷き詰めたリチウムイオンバッテリーはフロントアクスル上に搭載。エンジン上に搭載するインバーターやDC/DCコンバーターなどの電気系ユニットと高圧ケーブルで結んでいる。電源電圧は400V。容量は1.9kWhということだが、公開された画像を見ると大型の12Vバッテリー程度のサイズしかなく、相当に(出力密度を確保しながらも)エネルギー密度の高いセルを採用しているものと想像できる。 一方で、12Vバッテリーは軽量化のために一般的な鉛バッテリーではなく、軽量なリチウムイオンバッテリーを採用。こうした軽量化策もあり、T-ハイブリッド搭載車の重量増は先代比で50kgに抑えられているという。 投入された技術をざっと俯瞰(ふかん)してみると、T-ハイブリッドを搭載した911は単に絶対的な性能が高いだけでなく、レスポンスが良くて扱いやすく、スムーズで、環境にもやさしい(高性能車としては燃費がいい)スポーツカーに進化しているものと想像できる。 (文=世良耕太/写真=ポルシェ/編集=櫻井健一)
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