「ポルシェ911」に初のハイブリッドモデルが登場 その特徴を分析する
熱エネルギー回生システムとしても機能
エンジンの排気量によらず、トルク特性を横並びで評価する指標にBMEP(正味平均有効圧)がある。そのBMEPを計算してみると、3リッター版は19.0barなのに対し、3.6リッター版は19.9barでわずかに高性能化している。ターボエンジンとしては依然として控えめな数値で、3.8リッター版のBMEPは26.8barだ。BMEPが25barを超えるとパフォーマンスに振っている印象が強くなる。 T-ハイブリッドの核となる3.6リッターエンジンは、エンジン単体のスペックを見るとパフォーマンスよりも効率を重視したユニットに感じられるが、それで十分なのは、排気量増に加えモーターを組み合わせるからだ。 ターボが効果を発揮するのは排気エネルギーが十分に確保された領域である。発進時は無過給状態なので、蹴り出しの強さは排気量の大きさが効く。911のアップグレード版T-ハイブリッド搭載車は従来よりも20%排気量の大きなエンジンを積んでいるので、その効果で力強い蹴り出しが期待できそうだ。 そこから加速していくシーンでは、電動ターボチャージャーの出番となる。コンプレッサーとタービンの間に最高出力15PSのモーターを挟んでおり、排気エネルギーが少ない領域でコンプレッサーを高速回転させ、過給圧を高める役割を果たす。そのため、応答遅れのない、リニアで力強い加速が得られるはずだ。 3リッター版は左右バンクにそれぞれ1基、計2基のターボチャージャーを備えているが、3.6リッター版は1基の電動ターボチャージャーで済ませている。それで十分狙った性能を実現できるということだし、軽量化にもつながる。 また、電動ターボチャージャーに備わるモーターは、コンプレッサーをアシストするのに使うだけでなく、余剰の排気エネルギーを回生して電気エネルギーに変換するのにも使う。つまり、熱エネルギー回生システムとして機能するということだ。