極端なグリーン化政策で産業競争力を落とした欧州、ますます広がる米国との差にどう対応するのか?
12月1日、続投が決まったフォンデアライエン欧州委員長の2期目がスタートした。1期目は脱炭素化を推し進めたが、厳しい規制や行政手続きの結果、欧州連合(EU)の産業競争力は大きく低下した。ライバルの米国がトランプ政権下で成長志向を強める中、米国とEUの競争力格差はさらに広がる可能性が高い。(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員) 【著者作成グラフ】意外な順位の日本。主要国・経済圏の研究開発投資 11月27日、欧州議会で次期の欧州委員会の運営体制が正式に承認され、12月1日よりフォンデアライエン委員長が正式に続投し、新たな欧州委員会を率いることになった。 その日、筆者はベルギーの首都であり欧州連合(EU)の本部があるブリュッセルにいたが、新執行部に対する関係者の評価や姿勢は、楽観的というより悲観的だった。 前執行部において、フォンデアライエン委員長はデジタル化とグリーン化を二本柱とする経済成長戦略を打ち立てた。デジタル化はさておき、グリーン化に関しては当初からその過剰な規制のあり方に対して疑義が呈されていたが、そうした声に惑わされることなく、フォンデアライエン委員長が率いる欧州委員会はグリーン化にまい進してきた。 その結果、ただでさえ米国と中国に比べると低かったEUの産業競争力は、さらに低下することになってしまった。イタリアの前首相であるマリオ・ドラギ元欧州中銀(ECB)総裁の名前で出された「ドラギ報告書」では、EUの産業競争力の低さがストレートに指摘されており、これまでの欧州委員会の産業政策運営に対する危機感が強く表れている。 EUの投資不足は、とりわけ研究開発投資で顕著だ。特に日米との間では差を付けられていることが、世界銀行のデータから確認できる(図表)。特にモノの生産に関しては、コスト面での優位性で中国に劣るのは当然であるから、研究開発投資を通じて競争力を引き上げなければならないが、EUはそれができていない。 【図表 主要経済の研究開発投資】 欧州委員会は投資不足の主因が資金調達環境の悪さにあると認識しているようだ。