若くても「骨粗しょう症」 食事少なく、運動ゼロの「痩せ」が危険…あなたやあなたの娘さんは大丈夫?
日本は世界でも有数の「痩せの若年女性」が多い国だ。しっかり食べてしっかり運動している「健康的な痩せ」であればいいが、モデルのようなスリム体形に憧れ食事量を極端に減らした結果の「病的な痩せ」では、将来、骨粗しょう症のリスクが高くなる。「将来=年を取ってから」ではない。自覚している以上に骨粗しょう症に近いかもしれない。 最新研究「痩せ」は危ない(4)「痩せればいい」という考え方そのものが危険 骨粗しょう症は、骨密度と骨の質が低下し、骨がスカスカになって骨折しやすくなった状態だ。 女性が圧倒的に多く、2015年版の「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」では、有病者は未治療も含み女性980万人、男性300万人。 女性の骨量は20歳ごろにピークに達し、その後は維持されて閉経後に急速に低下する。高齢になるほど患者数が増えるが、「40~50代でも骨粗しょう症で骨折を起こす人は珍しくない。病的な痩せでピーク時の骨量が低ければ、もっと若い年齢でも骨粗しょう症に至る」と指摘するのは、九段坂病院診療部長兼整形外科部長の大谷和之医師だ。 さらには「検査で骨粗しょう症と診断されれば、年齢に関係なく、また骨折の有無に関係なく、直ちに薬物治療が必要」と続ける。 骨がスカスカの骨粗しょう症なのに治療せずにいると、「布団につまずいた」「電源テーブルに引っかかった」「ちょっと重いものを持とうとした」といった“ちょっとしたこと”でも骨折を起こしかねない。いや、自分では骨折を起こしそうなことをした記憶がないのに、知らないうちに骨折しているケースも少なくないのだ。 「ひどい骨折で痛みが強ければすぐに病院を受診するでしょう。ただ軽微な骨折では病院を受診するほどの痛みと感じません。そうすると骨粗しょう症の診断にもつながらない。そしてドミノ骨折といって、骨粗しょう症の骨折は連鎖する。次から次へと折れていくのです。骨粗しょう症の人は、そうでない人と比べて、1度目の骨折から2度目の骨折へとつながる率が4倍と報告されています」(大谷医師=以下同) ■検査しなければ骨の状態はわからない 39歳で不妊治療を始め妊娠した女性は、慢性的な腰痛で大谷医師の外来を受診。骨粗しょう症と診断された。この時、40歳。本人の自覚はなかったが、検査では複数箇所の胸腰移行部の椎体骨折が確認された。背中が丸まり、身長が1年間で10センチほど減っていた。出産で骨密度の減少を抑える女性ホルモンの分泌が急激に減少したこと、授乳で体内のカルシウム量が減少したことなどが原因と考えられる。 このケースはまれではあるが、しっかり認識すべきは、繰り返し述べている通り、「高齢者でなくても、骨粗しょう症→骨折を起こすリスクがある」ということだ。 骨の状態は、検査をしないとわからない。重要なのは、現在の骨の状態がどうなのかを把握し、対策を講じること。 「骨粗しょう症の検査では、DXA法という手法が取られます。腰椎と大腿骨の骨密度を計測し、2つの骨密度のうち数値が低い方が若年平均値の70%以下、骨折があれば80%以下で骨粗しょう症と診断されます」 つまり、腰椎は平均値以上だが、大腿骨が平均値以下であれば骨粗しょう症(その逆もある)。なお、骨密度は骨折のしやすさを見る一つの指標で、骨密度が高くても骨質が悪ければ骨折のリスクが高い。ただ、骨質を調べる一般的な検査法がないため、骨密度でチェックする。 「骨粗しょう症と診断されても悲観することはありません。骨密度は、薬物治療で必ず増えます。前出の40歳の女性も、骨折の手術後、継続的な薬物治療で骨密度が確実に増えていきました」 骨粗しょう症で早期の治療が重要なのは、それがきちんとした結果を出すからだ。一方、骨粗しょう症の治療をせず度重なる骨折を起こしていると、寝たきりリスクが上がるほか、健康関連QOLが低下する。 「最も多い椎体骨折では背中が曲がるので、肋骨が腹部を圧迫することによる逆流性食道炎、腰痛、寝返りを打てず不自由、見かけの問題などがあります」 骨密度や骨の質は、年を取ればだれもが低下する。骨粗しょう症は、いずれは自分に降りかかる病気であることをしっかり念頭に置こう。 ■リスク因子と対策 骨粗しょう症は年齢のほか、リスク因子がある。病的な痩せ、飲酒・喫煙、両親の大腿骨近位部骨折歴、糖尿病、早期閉経(45歳未満)などだ。 一方、骨粗しょう症対策としては運動(スクワットなど)と食事が重要。食事では、カルシウム・ビタミンD・ビタミンK・タンパク質を多く含む食品、野菜、果物が推奨されている。