災害時の遺体収容所どこに? 静岡県と伊豆半島の市町で異なる認識 「初動遅れ」懸念の声
巨大災害時に各自治体に設置される遺体収容所。静岡県第4次地震被害想定では最大約1万7千人の犠牲が発生するとされる伊豆半島南部の賀茂地域で、市町ごとの収容所準備の有無を巡って静岡県と一部の自治体側で見解が分かれていることが3日までの各機関への取材で分かった。切迫する巨大地震などに備える上で、事実認識が異なることで重要な施設整備や運営の議論が遅れる可能性があると懸念が出ている。
11月中旬の松崎町勤労者体育センター。遺体収容所の運営訓練が開かれた。身元確認や遺族相談の対応などを町や静岡県警、静岡県の関係者ら約100人が確認した。静岡県警の平井伸英刑事部長は訓練後、「賀茂1市5町では南伊豆町以外で収容所の指定が進んでいない。未指定の解消が喫緊の課題だ」と訴えた。 静岡新聞社の取材では、賀茂地区1市5町で場所が決まっていないと回答したのは西伊豆町と東伊豆町。南伊豆町は町武道館に定め、ほか1市2町も葬儀場などの活用を見込む。
一方、静岡県危機管理部は、熱海市を除き賀茂地区を含む県内全市町で遺体収容所の設置場所は決定済み-との見解を示す。同部担当者は理由について、市町ごとに遺体措置の計画が定められていることから、「計画があれば、併せて収容所の場所も決まっているという認識」とする。 加えて、賀茂地域を管轄する静岡県賀茂地域局は「各市町に今秋に聞き取った」として「(賀茂では)西伊豆町のみが未選定」と説明。県の内部で見解が異なる。 静岡県によると収容所設置に法的な義務はないが、検視や検案作業、遺体の引き渡しも行うため県内の多くの市町が既に設置を計画として定めているとしている。ある県警幹部は「収容所の場所が決まっていなかったり食い違ったりしていると、遺体が発見されてもどこへ運べばいいか分からず、遺族もどこへ探しに向かえばいいか分からない。認識の齟齬(そご)は初動の遅れにつながりかねない」と危惧する。