“目立つ都知事” “置き去りの都民” 10年で知事4人、「回転ドア都政」は何をもたらしたか?
猪瀬氏、舛添氏と2人続けて短命に終わった知事の失敗要因は、「政治とカネ」の問題だった。率いる組織の巨大さがトップの「慢心」や「傲慢」な態度を生み、「都民から遊離した」都政運営につながったように見える。もし肥大化した組織に元凶があるならば、この先、都政は「適正な規模」への大胆な刷新が必要となろう。「大きすぎる都政」に、財政面・行政面・組織面からメスを入れなければならない。
都知事選「誰」より「何」を
世の中にあたかもオリンピック担当知事を選ぶかのような動きがあるが、実は7月の都知事選は、“ポスト東京五輪”の都政を4年預ける人を選ぶ選挙だ。この頃から好況を支えた五輪特需が消え、日本は経済不況に見舞われ、都財政も一転して厳しくなろう。
一方で、大都市東京はかつて経験のない「老いる東京」問題が浮上する。何百万人もの高齢者へ医療や介護、福祉、年金など社会保障を施し、道路、橋、公共施設、地下鉄、上下水など「老いるインフラ」の更新が課題となる。どれも膨大なカネを要する話だ。それをどう生み出すか、強い行革が求められる。次の都知事は好むと好まざるに関わらず、生活者重視、ソフト重点の都政へ大きな政策転換を迫られ改革都政に手を染めることになる。 この10年続いた「オリンピック都政」は本来の姿ではない。イベント都政に過ぎない。「お祭り都政」と言い換えてもよいが、この先はお祭り都政ではなく、トップマネジメントが安定し、都知事が都政全体の総力を引き出しながら都民重視の都政をつくっていく、そこが課題となる。 これまでの都知事選には幾つかのジンクスがあった。 (1)他府県知事の経験者は都知事になれない (2)年齢が60歳代しか選ばれない (3)女性都知事は誕生しない (4)都知事が首相になるような歴史もない このジンクスの一つ、(3)の女性都知事誕生なしの歴史を塗り替えたのが前回の小池百合子氏だ。この先、各府県とも若返りがトレンドとなっている中、都知事選ジンクスの(1)、(2)、(4)を誰が塗り替えていくのか注目される。 「ポスト五輪」の都政、次に選ばれる都知事は、 ▼リーダーとして巨大都庁のガバナンス(かじ取り)をしっかり取る ▼人・インフラをはじめとする「老いる東京」問題の解決に本腰を入れる ▼膨れ上がった予算、人員をスリム化し、都区関係を見直す こうした都政の構造改革に挑むことが重要となろう。有権者も、このような視点に立ち「誰」ではなく「何」を重視した投票行動が求められる。 (佐々木信夫・中央大名誉教授)