“目立つ都知事” “置き去りの都民” 10年で知事4人、「回転ドア都政」は何をもたらしたか?
都政の営みは地味ながら日々の都民生活を守り、大都市の安全を確保していく、それが仕事だ。“長期戦略のある都政”に回帰できるかどうか、来る都知事選の最大のテーマだ。
「回転ドア都政」の3つの問題
「もう1つの政府」とも言われ、スウェーデン並みの予算規模15兆円、そして職員17万人と日本の地方自治体でダントツトップの巨大な都政だが、トップリ-ダーが次々に変わる事態は何をもたらしてきたか。 第1は都政の継続性だ。もとより身近な自治体行政を担うため、業務の8割方はルーチン業務で、トップがどうあろうが行政の継続性という点では影響ない。しかし、都知事が決断すべき重要な政治争点、ビッグプロジェクト、羽田空港拡張工事など国との交渉が絡む「政治マター」の問題は不連続となることで、混乱した。単なる不連続ではなく、石原氏の4期目に至っては尖閣諸島の購入を打ち出すなど、およそ都政のテーマではなさそうな政治家としての思いを独裁的に打ち出すなど政争の具のようになってきた。 第2は組織運営、職員への影響だ。民間の大会社も同じだが、トップが事実上「不在」となると、大組織の統合力は落ちる。職員はバラバラになる。知事のリーダーシップは、部下のフォロアシップが噛み合ってこそ発揮される。小池氏は、石原都政時代の豊洲移転過程を「ブラックボックス」と批判し、「いつ・どこで・誰が決めたか」に答えられない幹部を次々懲戒処分に付した。
この「見える化」を売りにしたはずの小池氏も、築地再回帰、国際会議場建設など築地跡地利用がコロコロ変わる。「いつ・どこで・誰が」を問うと、「私のAI(頭脳)で決めた」と独断の返事しかない。こうした姿勢を見せられると、職員の士気は落ちる。「誇れるわれらが社長」がいないのと同じように、職員の知事離れを生み、都知事の回転ドア交代によってその現象がさらに深化した。 第3は都民生活への影響だ。定形業務や行政サービス、工事など日常の都民サービスには影響しないが、都民の都政に対する信頼感の低下(=不信感の高まり)が生じる。都民は、初の女性都知事誕生に、閉塞感の打破を期待した。しかし、就任1年足らずで民進党(当時)を丸呑みする形で“希望の党”を立ち上げ、自ら党首として衆院選に打って出た。都政より国政を向いたその姿を見て都民は失望した。希望の党惨敗後の小池都政は鳴かず飛ばずの日々が続いている。