新型メルセデス・ベンツ E220dは、21世紀のデジタルテクノロジーと20世紀的な伝統美の融合だったワケとは? やっぱりベンツはイイ!
やっぱりメルセデス・ベンツはいいなぁ
おまけに静かだ。100km/h巡航は9ATの8速ギアで1500rpm弱。アウトバーンに多い制限速度130km/hだと9速トップで1500rpm弱である。エンジン回転が低いこともあるし、風切り音を抑えるべく、AピラーとCピラーの構造を含めて、空力を徹底したという。おそらく、それが効いている。ちなみにCd値はセダンで0.23、ステーションワゴンで0.26を誇る。 静粛性に関してはこのあと乗ったE200ステーションワゴンを明らかに上まわる。ワゴンはキャビンと荷室がつながっているから致し方ないわけだけれど、セダンの長所はそこにある。乗り心地もE220dのほうが、ディーゼルエンジンの重さもあってだろう、しっとりしているように筆者は感じた。 ブレーキはいつ何時でも効く感じがする。素晴らしい。やっぱりメルセデス・ベンツはいいなぁ、と思わせる。 Cクラスと直接比較したら、また印象は異なるにしても、E220dはホイールベースが2960mmとCクラスより95mmも長くて、オプション満載の試乗車は車重が1920kgもあるのに、運転感覚としてはそういうボディの大きさや重さをまるで感じさせない。ちょっと大きなCクラス、ぐらいの感じで操ることができる。どっしりとしたW124みたいEクラスではなくて、21世紀のEクラスのW214は弁慶並みのサイズなのに義経のように軽やかなのだ。 最後に内燃機関のファンにとって朗報である。メルセデス・ベンツは今年2月、2030年の完全EV化を撤回し、EV化は市場の動向による、という見解を打ち出している。つまり、ディーゼルエンジンはこれまでの予想よりももうちょっと延命するかもしれない。参考までにカタログ燃費をご紹介しておくと、WLTCモードでE200の14.3km/L、E350eの12.7km/Lに対して、E220dは18.5km/Lと頭抜けている。内燃機関のファンならずともメルセデスの方針転換は納得がいくのではあるまいか。
文・今尾直樹 写真・田村翔 編集・稲垣邦康(GQ)