さよなら磁気切符、QRコードに置き換え環境対策-コスト削減も
(ブルームバーグ): 裏面に磁気の付いた電車の切符が徐々に姿を消すことになる。QRコードが印刷された切符に置き換えることで、鉄道会社は環境負荷の低減やコスト削減につなげたい考えだ。交通系のICカード普及で今や切符を買うこと自体が少ないが、一つの時代の終わりを告げる動きでもある。
JR東日本など首都圏の鉄道8社は5月、従来の磁気切符からQRコードを使用した乗車券に2026年度末以降、順次置き換えると発表した。駅の自動改札機などは磁気切符用の構造が複雑で、「中長期的に維持していくためには持続可能なシステムに移行する必要がある」としている。
各社が磁気切符の廃止にかじを切る背景には、利用率の低下に加え環境意識の高まりがある。昨今はサステナビリティー重視の経営に注目が集まっており、こうした考え方が反映された形と言えそうだ。
磁気切符は金属を含んでいるため、リサイクルの際には磁気層の分離と廃棄が必要で、特殊な対応が必要となることから一定の環境負荷がかかる。QRコードを印刷した用紙に切り替えることで、負荷の低減を図る。
海外でも一部、磁気付きの切符から移行する動きが見られる。米ニューヨーク・タイムズの報道などによると、現地では地下鉄の乗車などに使う「メトロカード」を置き換える目的で、スマートフォンやクレジットカードによる非接触型決済システムを導入している。
50年の歴史
今回の国内8社のうち、東武鉄道は27年度までの中期経営計画の中で磁気切符全廃の方針を掲げる。同社で自動改札機が試験的に初めて導入されたのは1972年で、磁気切符は50年以上の歴史を持つ。
同社では足元での磁気切符の利用率は5%を下回る水準だが、枚数にすると推計1日当たり4-5万枚に上る。現在、利用済みの磁気切符は専門業者に依頼し溶解炉で処理しているが、この工程がなくなれば一定の環境改善効果が見込まれる。
QRコード切符用の改札機に置き換える費用はかかるものの、現状の改札機にかかるメンテナンス費用などを差し引くと、トータルで年間数億円のコスト削減につながるという。