岩橋清勝・リオン社長に聞く 認知症予防に補聴器が果たす役割と啓発の必要性
◇パナソニックとのアライアンス、狙いは
国内メーカーのパナソニックと、2024年4月に補聴器の共同開発アライアンスを締結しました。私たちリオンは日本初の量産型補聴器を発売して以来、長年にわたって培ってきたノウハウがあります。そこにパナソニックが持つワイヤレス通信などの技術を、補聴器の進化に合わせて組み合わせることで、お互いが持っている技術的強みを相互に生かす、という狙いからスタートしています。 グローバルの市場をみると、「世界5大メーカー」といわれる5社があり、それらと伍していくには“オールジャパン”で当たりたいという思いもあります。 国内の補聴器市場は、日本補聴器工業会のまとめで現在(2023年)年間約65万台です。我々は、今後20年ほど市場は徐々に伸び、高齢者人口の増加に加え、聞こえの大切さの周知が進むことや補聴器購入に対する自治体の購入費助成なども後押しになって、ピーク時には100万台程度になると見込んでいます。 最新の補聴器は、環境に合わせてノイズを低減したり、スマートフォンを使って音量や音質のセルフ調整ができたり、テレビの音声が直接届いたり、充電式で電池交換が不要になったりと、非常に高機能になっています。 しかし、技術の進歩、製品の改良に終わりはありません。私がこれからの補聴器でさらに強化されるとよいと思う機能は2つあります。1つは、使用している環境を補聴器が察知してその場に合った特性に自動的に調整する機能です。たとえば駅の構内とコンサートホール、大自然の中では聞こえ方が変わります。通常は脳が無意識のうちに補正しているのですが、難聴になるとそうした脳の機能も衰えてしまっています。脳の代わりに補聴器が自動で補正することによって、より自然に音が聞こえるようになるとよいと思っています。 もう1つは「情報収集の端末」としての機能です。駅の案内や病院の呼び出しなど騒音に紛れがちな街の中の情報、家の中でインターフォンや家電とじかにつながって来客や調理終了の合図などが直接補聴器に届いたら便利でしょう。 パナソニックはそうしたインフラを組み立てるといったノウハウを持っていますので、この度の補聴器の共同開発を縁に、近い将来にパナソニックとリオンが協力し社会福祉のさらなる高度化を進めることができればいいなと思っています。 プロフィル 岩橋 清勝(いわはし・きよかつ) リオン代表取締役社長兼イノベーション推進室長 1979年 リオン入社。環境機器事業部長、上海理音科技有限公司董事長兼務、技術開発センター長兼同センターR&D室長などを経て2022年、代表取締役社長就任。2023年より現職。 座右の銘は、売り手よし、買い手よし、世間よしの「三方よし経営」。「売り手であるメーカーや販売していただく補聴器専門店など、さらに買い手のユーザーの皆さま。 その人たちが幸せになれば、社会全体も幸せになると思っています」
メディカルノート