岩橋清勝・リオン社長に聞く 認知症予防に補聴器が果たす役割と啓発の必要性
◇快適な補聴器の聞こえに必要なプロセス
もし聞こえにくくなったら、耳鼻咽喉科で検査を受け、補聴器が有効と診断されたら聴力検査の結果を基に専門店で調整(フィッティング)をしてもらうことが大切です。補聴器は眼鏡と違って、一度フィッティングをするだけで使えるというものではありません。 人間の脳は、聞こえにくい状態が長期間続くと、音の刺激の少ない状態に慣れていってしまいます。そこに、補聴器で正常な聞こえに近くなる音量を流し込むと脳が“びっくり”して疲労感を覚え、「うるさい」「煩わしい」と感じてしまいます。ですから、まずは目標とする聞こえの7割程度になる音量から始めて段階的に調整し、慣れるよう補聴器装用者の方にトレーニングしてもらう必要があります。補聴器を調整する人はそれに寄り添い、装用者との話し合いの中からヒントを得て、少しずつ調整を変えるなどのプロセスが大切です。逆に、そのプロセスを経ないと「補聴器は使い物にならない」という誤った認識を持たれかねません。 その調整に1~3カ月ほどかかることもあるのですが、それをやるからこそ快適な聞こえを手に入れることができるのです。 耳鼻咽喉科の専門家と一緒にそのような調整とトレーニングの必要性を訴えていくことは、我々メーカーや販売店の1つの使命だと考えています。
◇補聴器とは似て非なる「集音器」
外見は補聴器に似ている「集音器」という製品があり、補聴器と混同している方も少なくありません。両者の違いについても啓発が必要だと感じています。補聴器は聞こえを補う医療機器であり、認証を受けるために厳しい基準が設けられています。一方、集音器には審査や規制、基準がなく、品質や機能は千差万別です。 数年前、国民生活センターに集音器についての問い合わせがあったと報道されました。聞こえの調子が悪くなり、広告などを見てある集音器を購入した方が「必要な音も騒音も同じように大きくなり、使えないので調べてほしい」という依頼が寄せられ、調べたところこの集音器には細かい調整機能がなかったそうです。補聴器は一般的に、一人ひとりの聞こえに合わせて専門家が細かく調整しますので、集音器も補聴器も同じだという誤った認識を持たれてしまうことを危惧しています。