出生率が低下している一因は「気候変動」 影響を受けやすいのは意外な世代だった
例年なら涼しくなってもいい頃まで暑い日が続いた今年の夏。気候変動の影響で、来年以降も暑い時期が長引く可能性は高い。出生率と暑さの関係を調査した最新の研究結果でわかったことは──。 【画像】出生率が低下している一因は「気候変動」 影響を受けやすいのは意外な世代だった
猛暑と出生率の関係
地球温暖化が進行し、熱中症による死亡や健康被害などが増えた。そういった目立つ被害に加えて、猛暑は人間の出生率にも影響を与えていることが明らかになってきたと、英誌「エコノミスト」が報じている。 ドイツのマックス・プランク人口動態研究所の調査では、特に暑い日の約9ヵ月後に出生率が確実に低下していることが確認された。スペインでの調査では、気温が25~30℃の日が1日増えるごとに、合計特殊出生率(TFR)は0.3%低下し、30℃を超える日はさらに0.8%の低下が見られた。 この傾向は欧州以外でも確認されている。たとえば、米国では27℃を超える日が1日あると出生率が0.4%低下することがわかった。韓国、ブラジル、サハラ以南のアフリカでも同様の傾向が確認された。ハンガリーのタマス・ハジュド氏による研究では、欧州全体で25℃を超える日が1日増えるごとに出生率0.7%の低下が報告されている。
なぜ暑いと出生率は低下するの?
出生率の低下をもたらす背景には、暑さが精子の質や数に影響を与えていることが挙げられる。とある実験では、高温の環境にいたタイミングから数週間かけて精子の質が低下することが確認されており、これが出生率の低下の一因となっている。 欧州メディア「ユーロニュース」は、3ヵ月前に猛暑の環境下にいた男性は、精液中の精子数が46%の確率で減少すると報じている。また、40%の確率で精子の動きが弱くなるという。 さらに、猛暑の影響をもっとも受けやすいのが25歳から35歳の男性だと専門家は述べている。通常、若い男性の精子は活発な傾向があると言われているが、猛暑の影響を受けやすいのが若い世代であることは多くの家族の出産計画に影響を与えるだろう。 現時点では、気温の上昇による出生率への影響はまだ小規模だが、地球温暖化が進むにつれて、その影響が拡大する可能性もある。エアコンの使用がこの影響を軽減する効果も確認されており、1970年代以降の米国ではエアコンの普及に伴い、気温が出生率に与える影響は緩和され始めた。 出生率の低下が加速するなか、気候変動による影響を理解することが新しい解決策につながるかもしれない。
COURRiER Japon