変革を求めた青森県民、保守分裂の知事選で圧勝したのは自民色を薄めた元市長だった
一方、ここまでの集客力がなかった小野寺陣営の焦りは募る。木村氏は「知事選はアイドルの総選挙ではない」と宮下陣営の戦い方を暗に批判したが、熱気の差は隠しようがなかった。 6月4日の投開票日、午後8時に投票が締め切られた瞬間、報道各社は出口調査結果などを基に一斉に宮下氏に「当確」を打った。最終的な得票数は宮下氏40万4358票対小野寺氏17万4155票。知事選は他にも新人2人が立候補したが、宮下氏は全市町村で最多得票だった。 ▽「何かを変えてくれそう」 なぜ宮下氏は圧勝したのか。有権者が口をそろえるのが県に漂う閉塞感だ。青森県は人口減少が著しく、コロナ禍や物価高が拍車をかけて繁華街では飲食店の閉店も相次いでいる。投票日前日、青森市のタクシー運転手は「青森がこんなになったのは、何もしなかった三村知事と自民のせいだ」と怒りをぶちまけた。そんな中で、今回は保守分裂選挙とはいえ「小野寺=自民、宮下=反自民」に見えたという。「自民ではだめだから、何か変えてくれそうな宮下氏に投票する」と言い切った。ある県議は、宮下氏の姿は全国的に勢いを増す日本維新の会と重なって見えたという。
一方、自民関係者は「小野寺氏は自民議員が並べば並ぶほど票を落とした。選挙のやり方を変えなければいけない」と党の集票力低下に危機感をあらわにした。宮下氏は当選翌日の会見で、自民県連にあいさつに行く予定はあるか聞かれて「特にない」と突き放した。次期衆院選に向けて分裂のしこりが残るのは確実だ。